本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

バカの壁 (養老孟司)

2006-10-31 18:56:29 | エッセイ
(2003年発行)


この本は大ヒットしたから知ってる人は多いと思う。



2003年 ベストセラー第一位
新語・流行語大賞
毎日出版文化賞特別賞



発行部数は、2006年8月の時点で419万部
戦後日本の歴代ベストセラー4位・・・なんだそうだ。



凄い売れ行きだ。
内容はどちらかというと「硬い」ものなのだが・・・。



売れた訳のひとつとして
タイトルにインパクトがあったことが考えられる。
帯に書かれた
「話せばわかる」なんて大ウソ!・・・という言葉もインパクトがある。
そして、聞き書きの話し言葉という形態にしたため、非常に読みやすくなっている。ということ。



マスコミにも多く取り上げられて、まさしく「流行」になり、
「バカの壁」を読んでなければ、流行遅れになるっていうわけで、日頃、こういう本を読まない者までもが次々と買っていったのかもしれない。




<カバー折り返し部分の説明より>
「話せばわかる」なんて大ウソ! イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人。互いに話が通じないのは、そこに「バカの壁」が立ちはだかっているからである。いつの間にか私たちを囲む様々な「壁」。それを知ることで世界の見方が分かってくる。
人生でぶつかる諸問題について、「共同体」「無意識」「身体」「個性」「脳」など、多様な角度から考えるためのヒントを提示する。



一言で言えば、答えは一つではない!ってことかな?



もともと問題にはさまざまな解答があり得るのです。
そうした複数の解を認める社会が私が考える住みよい社会です。
(まえがきより一部抜粋)



大いに同感!!
「戦争」とか「差別」とか・・・<複数の解>つまり相手を認める心があれば起こらないのではないだろうか?



著者は「一元論の否定」を訴える。

バカの壁というのは、ある種、一元論に起因するという面があるわけです。
バカにとっては、壁の内側だけが世界で、向こう側が見えない。
向こう側が存在しているということすらわかっていなかったりする。

安易に「わかる」、「話せばわかる」、「絶対の真実がある」などと思ってしまう姿勢、
そこから一元論に落ちていくのは、すぐです。
一元論にはまれば、強固な壁の中に住むことになります。
それは一見、楽なことです。
しかし向こう側のこと、自分と違う立場のことは見えなくなる。
当然、話は通じなくなるのです。



「バカの壁」というインパクトのあるタイトルのみが一人歩きしてしまったような感があるが、
こういう本は一過性のブームで終わらずにいつまでも大勢の人たちに読みつがれていって欲しい。
そして、一元論、二元論、というものをひとりひとりが深く考えて欲しいと思う。

うそうそ (畠中恵)

2006-10-26 18:16:23 | 小説
(2006年発行)



<帯の言葉より>
日本橋の大店の若だんな・一太郎は、摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいた。
その上、病だけでは足りず頭に怪我まで負ったため、主に大甘の二人の手代、兄・松之助と箱根へ湯治に行くことに!

初めての旅に張り切る若だんなだったが、
誘拐事件、
天狗の襲撃、
謎の少女の出現と
旅の雲行きはどんどん怪しくなっていき・・・・・・。

大好評
「しゃばけ」シリーズ
第五弾!



このタイトルの「うそうそ」って、「嘘嘘」っていう意味かと思っていたら、全く違う意味だった。
「江戸語辞典」(東京堂出版)によると、
たずねまわるさま。きょろきょろ。うろうろ。
・・・という意味なのだそうだ。



きょろきょろしてる、っていうのは「うそうそしてる」っていうのね。
う~~ん、何となく雰囲気が出てて面白い。



今回の話で一太郎が行く「箱根」。
実は、私が先日行ったばかりの所だ。
杉並木とか芦ノ湖とか、箱根宿とか・・・
ああ、こういう感じの所に一太郎たちはやってきたんだな~って、思いながら見ていた。



小説でも漫画でも、その話の舞台になる場所を実際に知ってるのと知らないのとでは、
作品世界の理解が少々違ってくる。
その土地の空気、雰囲気、行ってみないと微妙な所は伝わらない。
その点、今回箱根に行けて良かったと思う。



この作品を読むといつも思うのだが、
一太郎の口調が柔らかくて、性格の穏やかそうな感じがよく出ていてとても気に入っている。
小説や漫画のセリフはそのキャラの性格を際立たせるためにも、
ひとりひとり、口調が違っていて当たり前なのだが、
一太郎のはんなりと柔らかく、ちょっと天然風?でいて、しっかりしている、そんな感じのしゃべり方が心地よく感じられるのだ。

ドリームボックス 殺されてゆくペットたち (小林照幸)

2006-10-24 07:54:53 | 小説
この本は「動物愛護センター」側から見た動物の現状だ。
動物ものの本は多く出てるが、ほとんどがペットや盲導犬として大切にされた犬の話だ。



この本は違う。
特定の施設や人物を描いたものではないが、
全国どこの街にもある普遍的な物語だ。




<帯の言葉より>
「助けて下さい!」
「私をもらって下さい!」

ペットブームの裏側で
年間およそ40万匹の犬猫が見捨てられ、
”ドリームボックス”と呼ばれる
殺処分装置に送られている・・・。

大宅賞作家が描く
”ペット大国”ニッポンの現実!



昔は野良犬って結構どこにでもいたように思う。
しかし、最近は殆ど見たことがない。
たまにうろついてる犬もいるが、たいていはどこかの飼い犬で鎖が外れただけのもののようだ。



あれだけ多くいた野良犬はどこに行ったのだろう?
”動物愛護センター”でアウシュビッツのような”ドリームボックス”に入れられて殺処分されたのだろうか?
ブームで一時期流行ったシベリアンスキーたちは今、殆ど見かけない。
彼らは一体どこに行ったのだろう??



この本を読むと、責任を持ってペットを飼わねばならない、と強く思う。

しゃばけ(畠中恵)

2006-10-02 10:08:30 | 小説
先日図書館で「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」の三冊を借りてきて読んだ。
この「しゃばけシリーズ」はあと二冊あるのだが、それは貸し出し中だったのかなかったので次回探してみるつもりだ。



江戸の大店の若旦那、一太郎が主人公。
17歳。
両親から溺愛されている。
身体が弱くすぐ寝込む。
手代は、犬神、白沢という妖怪。
身の回りには、屏風のぞきや鳴家(やなり)など妖(あやかし)がいっぱい!



一言で言えば、<愉快で不思議な妖怪人情推理帖>




漫画にしても結構面白いかも?と思っていたら、この作者はもともと漫画家としてデビューしていたようだ。申し訳ないが知らなかった。今も漫画を描いてるのだろうか?



金持ちの坊ちゃんで身体が弱い、という設定は私の好みである。
しかも、いつも頼もしい妖怪の手代がガードしていてくれているし・・・


妖怪ものが好きな人にはお勧めの本だ。