「イニュニック」(生命) 星野道夫 著
大分昔に一度読んだ本です。
何日か前
テレビで星野道夫さんの息子さんが
アラスカ
お父様の足跡を辿って
旅された時の番組をやっていました。
それを観て
もう一度きちんと読んでみたくなって
本箱から取り出して
再び手に取ったものです
私の様な婆に言われては
有難くもなんともない事ですが
登山家 植村直巳さんと
この星野道夫さんは
私の人生での心の恋人
一生涯愛していきたい方なのです。
「イニュニック」は
夢に見ていたアラスカで住む事
それを
たまたま友人に薦められて
土地を買い家を建てて
本格的に住み始めた
初めの3年間の事が描かれています。
最後の解説
柳田邦男さんの
「言葉の発見者としての星野道夫」
は
彼の本全てを語っていると思います。
これを読めば
彼が
どれだけ純粋な心を持った人か
どれだけ真摯にアラスカを知ろうとしているか
どれだけその場にぴったりの言葉で表現出来得る人物か
が
わかってしまいます。
特別の言葉を使っているわけでないのに
その時その場の情景が
きちんと瞼の中に感じられるのです。
そして
彼の気持ちが胸に伝わってくるのです。
この方の本には
昔の人々の言い伝えが時々出てきますが
友人キャサリンが
ブルーベリーの細かい実を取るのが面倒になって
枝ごと折っておばあさんに持って行った時に言われたという言葉
「ブルーベリーの枝を折ってはいけないよ。
おまえの運が悪くなるから」
やってはならないタブーがあり
その約束を守ることは自分の運を持ち続けることなのだ。
とい文章。
なんでもない昔の人が良く言った様な言葉です。
でも
こういうことが
最近は殆ど無くなっている様な気がします。
なんでも
ネットで調べれば教えてくれる
知識はあちこちに散らばっている
便利ですが
それは単に知識であって
心に響くものではないのです。
・・・と私は思います。
こういう文章が
引用だけでなく
沢山綴られているのです。
それは
星野さんが純粋に信じる言葉であって
文章に表したから
読んでいる人間にも
しっかり響いてくるものではないかと思うのです。
惜しくもこの方
カムチャッカで
あんなに愛してやまなかった熊に遭遇して亡くなっております。
「おれも このまま 草原をかけ
おまえの からだに ふれてみたい
けれども おれと おまえは はなれている
はるかな星のように 遠く はなれている」
彼の写真集
草むらに伏して首をもたげた母熊と
その背に乗った赤ちゃん熊を
至近距離で捉えた彼の写真に添えられた言葉だそうです。
その近くて遠い
近寄りがたい相手に襲われた彼は
その時なんと思ったのか
彼の言葉を教えて欲しい想いがしています。
200頁ほどの文庫ですが
500頁
いえ
それよりももっとのページ数を持つ本ほどの重みを
読み終わった今
感じています。