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ポール・デスモンドの考えるジャズ

2016年12月17日 | jazz LP (Fantasy)

The Paul Desmond Quartet featuring Don Elliott  ( 米 Fantasy 3235 )


貴重なポール・デスモンドのリーダー作だが、このジャケット・デザインはある意味この人の音楽的特徴を上手く暗示している。 サン・フランススコ在住の
女性画家が描いた絵画を採用している。 大人が描く子供が描いたような絵を観る時に感じるある種の奇妙な感じ、それはデスモンドの一見無拓で
清らかなアルトが、実はそういううわべだけの印象ではその本質を語ることはできないとすぐに悟る時に感じる居心地の悪さと共通している。

サックスとトランペットの2管でピアノレスという形はマリガン・カルテットを意識したものだろうけど、デスモンドの麗しい音を堪能するにはバックで
鳴る和音楽器がないほうが好ましい。 ベースとドラムスは当時のブルーベック・カルテットの2人で、終始控えめにリズム・キープするだけのスタイルで
あることも幸いしている。 デスモンドは自分が演奏している最中に背後でうるさくやられることをとても嫌ったから、これは理想的な演奏だったのだろう。
ドン・エリオットもトランペットとメロフォンを交互に持ち替えて、そのとぼけた音が全体のサウンドを穏やかでまろやかにしている。

どの曲も落ち着いたミドル・テンポ設定で、非常に穏やかで上品なテイストに満ち溢れている。 でも、マリガンやゲッツらのような乾いたサウンドとは違い、
適度の湿度と潤いを湛えたみずみずしさ(なんだか女性のお肌の話みたいだけど)があり、ほんのりと芳香漂うような色香がある。 そういう印象とは裏腹に、
デスモンドのアルトは弱々しいどころか、力強く生々しいサウンドで鳴っていて素晴らしい。

西海岸の白人ジャズではあるけれど、ポール・デスモンドはアンサンブル形式を嫌い、あくまでも東海岸のアドリブ主体のジャズにこだわり続けたので、
音楽的には王道のジャズになっているのが非常に好ましい。 ブルーベックが苦手な人でも、これならきっと愉しめるだろう。


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