Sahib Shihab / Jazz - Sahib ( 米 Savoy MG-12124 )
サヴォイのカタログ番号の若いものはビ・バップの残り香を帯びた古いスタイルのジャズが多いが、50年代後半になると硬派なハードバップがたくさん
出てくる。その中でも屈指の内容を誇るのがこのアルバム。サヒブ、ウッズ、ゴルソンの3管が織りなす暗く重い雰囲気が最高の仕上がりだ。
よく考えると非常に珍しいメンツの組み合わせで、他では聴くことのできない色合いのハーモニーが1度聴くと忘れることができない強烈な印象を残る。
このアルバムのいいところはサヒブの無国籍感が抑えられて、ベニー・ゴルソンの都会的な夜の静寂を想わせる深い抒情感が全面に出ているところだ。
サヒブの個性はやり過ぎると鼻につくが、ここではそれが抑制されて演奏の上手さが音楽を補強している。ゴルソンが音楽全体を統率していて、それが
上手くいっている。
フィル・ウッズのアルトは都会の摩天楼のような輝きを放ち、その周りをゴルソンの深くくすんだテナーが夜の闇のように大きく覆う。ビル・エヴァンスも
素晴らしいソロを残していて、この組み合わせは成功している。全体的にゆったりとしたテンポの曲が多く、それが殊の外いい雰囲気を出している。
そういうムードを重視した音楽だけど、軟弱な音楽にはならず、骨太でずっしりとした重さが残るところはこの顔ぶれだからこそだろう。
RVGの完成したモノラルサウンドが見事で音響的にも素晴らしい。唯一の欠点は内容を反映しようとしないジャケットデザインのいい加減さで、これが
このレーベルの評価の足を引っ張っているのは相変わらずの残念さだ。このアルバムもジャケットが違っていれば、最高の評価を得られただろう。