The Dave Brubeck Quartet / Time Out ( 米 Columbia CS 8192 )
やっと見つけた、新品同様のステレオ初版。 このコンディションの良さに意味がある。 GW前半に歩いて探した猟盤の成果である。
ここまでモノラル・プレスとステレオ・プレスの差が大きいレコードも珍しい。 その中でも一番違いが顕著なのが、ジョー・モレロのドラム。
もう、部屋のあちこちの角度からドラムやシンバルの音が身体に刺さってくる。 スピーカーは2つしかないのに、なんでこんなにいろんな角度から
ドラムの音が飛んでくるんだろう。 "Take Five" の中間部でモレロが叩くフロア・タムの音が急に私の背後から聴こえて、思わずビクッとなる。
これは一体、どういう原理なんだろう。
そういう空間表現に長けているだけではなく、楽器の音の艶もモノラルとステレオではまったく違う。 濡れて雫が飛び散るようなシンバル、
灯りが消えた深夜の街に静かに鳴り響くようなアルト、和音が濁らず音が分離しているピアノ、どれをとっても楽器の音の実在感が違う。
1959年の夏のニューヨークでの録音だから、音がいいといってもそれはHi-Fiな良さということではなく、あくまでその時代相応の良さであるけど、
それがどうにも音楽をより音楽的に響かせているようなところがあって、不思議だと思うのだ。
こうまで音場感が違うと、音楽そのものも違うものを聴いているような錯覚に陥る。 普通こういう場合はモノラルにはモノラルの良さがある、と
擁護されるものだけれど、このレコードに関してはわざわざ倍の値段が付くモノラルを聴く必要はないんじゃないだろうか。
ステレオ盤なので傷のないものを、とこだわったせいで随分時間がかかりました。
これを聴くともうモノラル盤には戻れませんので、さっさと処分することにします。