Zoot Sims / Waiting Game ( 米 Impulse AS-9131 )
1966年11月のロンドンで録音されたこのアルバムは、秋のどこまでも透き通った蒼い空の雰囲気や空気感が詰まった傑作だ。 いつまでたっても蒸し暑い東京に
秋はいつやって来るのかわからないから、このアルバムをかけて一足先に家の中を秋色に染めている。
ゲイリー・マクファーランドの編曲を使って中規模の弦楽オ-ケストラをバックにズートがスタンダードをゆったりと吹く、大人のバラードアルバムだ。
オーケストラは控えめで趣味が良く、さすがは英国オケだ思わせる。 マクファーランドのスコアも素直で柔らかく、音楽の情感を静かに演出している。
ズートの円熟味はピークを迎えており、安易なムード音楽に堕することなく、深みのある哀感と上質さに溢れている。 手慣れたスタンダードだけではなく
マクファーランド作のバラードも混ぜられていて、これが陳腐な雰囲気に堕ちることから救っている。
このアルバムはステレオ盤で聴かなきゃいけない。 音質がとても良くて、バックのオーケストレーションが部屋全体に大きく拡がり、その中をズートの
テナーが悠々と流れて行く音場感が最高に素晴らしい。 RVGは制作に絡んでいないけれど、それが却ってよかったのだと思う。
紐付きは敬遠されるのか、あまり人気のない作品のようだけど、私にはその方が好都合だ。 一人静かにこの音楽にいつまでも浸っていたい。