Oliver Nelson / The Blues And The Abstract Truth ( 米 Impulse A-5 )
ポール・チェンバースのウォーキング・ベースとビル・エヴァンスの崩した和音の響きが全体を支配する "Stolen Moments" はマイルスの "So What" そっくりの
雰囲気で、この1曲でこのアルバムは歴史に残る名盤となったけれど、もう一つの類似点は暗い部屋の中を想わせる残響の効いたダークなサウンドだ。
レーベルも違えば録音技師も違うこの2つのアルバムには不思議と似通ったところがある。 内容は素晴らしいし、録音も凄い、ということで昔からいろんな
切り口で褒められる作品だが、確かにこのアルバムはサウンドの快楽にどっぷりと浸れる愉しみを味わうことができる。
このモノラル盤の特徴はたった1つ、それは限りなくステレオ・サウンドに寄せたモノラル・サウンドだということだろう。 この2つの境界線はかなり曖昧だ。
知らない人にブラインドで聴かせたら、その違いに気付かないかもしれない。 もちろん、細かいところを見れば違いはいろいろあるが、そういう部分が
モノラル盤の印象を決定付けることはない。 ステレオに寄せながらもRVGモノラルのざらりとした迫力が際立っていて、モノラルとステレオのいいところが
互いに殺し合うことなく共存できている。 ドルフィーのアルトが1歩前へ飛び出してくる感じが生々しい。
対するステレオ盤は、RVGのステレオ録音の最高峰の1つではないかと思わせる仕上がりだ。 聴いていて、これは本当にきれいな音だと思う。
楽器の音がとにかくきれいだし、分離がいいので重奏部分も音が濁らないし、何かが突出することもなく全体のバランスが究極的に素晴らしい。
ロイ・ヘインズのシンバルの音の金色の粉を吹くような輝きが特に印象的だ。 この美しさをモノラルの中でも生かそうと腐心したのはよくわかる。
このアルバムは、両者引き分け。 どちらにも他方には無い際立った美点があり、甲乙は付けられない。 そして何より重要なのは、この録音は媒体の種類や
版を選ばないというところではないか。 ちょっと興味があったので70~80年代の再発盤やCDも聴いてみたが、どれもとてもいい音だった。
元がどんな形態にも耐えうる録音だった、というところが本当の凄さなのかもしれない。
Oliver Nelson / The Blues And Abstract Truth ( 米 Impulse AS-5 )
私はOliver Nelsonが苦手で、ドルフィーが入っていてもNew Jazz盤はあまり聴きませんが、これは音が素晴らしいのでたびたび聴いています。
このレコードの音の良さはオーディオファンの知るところとなり、オリジナルはどんどん出世してIMPULSEの中で最も高いレコードになりました。
ただ音質でいうと、サードプレスでもオリジナルと差はなかったです。刻印も同じです。
演奏内容は好き嫌いがあるでしょうけど、音の良さは誰が聴いても納得するでしょうね。