The Bob Freedman Trio / Piano Moods ( Savoy Records MG 15040 )
サヴォイはピアノ・トリオのレコードを作るのが下手だった。ジャズ専門レーベルであれば、必ずと言っていいほどレーベルの軸となるような
ピアニストを抱えて、アルバムを量産しながらそのピアニストを育てたものだが、サヴォイの場合はそういう姿勢がなく、場当たり的な対応しか
していない。それはおそらくオジー・カデナの音楽嗜好に依るものだったのだろう。どうやらピアノ・トリオがあまり好きではなかったようだ。
このボブ・フリードマンの場合もそうで、この10インチ盤を1枚作っただけでその後は放り出してしまっている。ジャケット裏面のライナーノートに
カデナ自身がフリードマンの紹介を寄稿しているが、そこまでだった。そのせいでフリードマンのレコードはこれ1枚しか残っておらず、本人は
晩年まで音楽活動していたようだが、結局、世に広く知られることはなかった。
ありふれたスタンダードをゆったりとムーディーに弾き流すだけの内容で、一見、ラウンジ・ピアノのようだが、注意深く聴くとハーモニーの
みずみずしさや打鍵の的確さなどに見るべきところがある。もう少し丁寧にプロデュースしてアルバムをもっとしっかり作っておけばメジャーに
なれたのではないかと思うと残念だ。レコード会社はアルバムをリリースすることでアーティストを一人前にするという役割や機能を担っている
のだから、その責任を自覚して活動しなくてはいけないが、このレーベルはそういう姿勢に欠けていた。これはその徒花のようなレコードの1枚。