廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

サイドメンバーたちの華麗なるキック

2018年04月29日 | Jazz LP (Columbia)

Gene Krupa / Gene Krupa's Sidekicks  ( 米 Columbia CL 641 )


ジーン・クルーパ本人にはさほど興味はなく、各曲のソリストの歌や演奏が聴きたくて手にした。 クルーパはドラマーとしての顔とバンド・マスターとしての顔の
2つを持っていて、これはSP期にコロンビアに録音された曲を集めてLPとして切り直したもの。 コロンビアのLPの初期のものにはこういう編集ものが
たくさんあって、結構面白い。 

ヘレン・ワードが歌い、ジェリー・マリガンが吹き、デイヴ・ランバートが歌い、ヴィド・ムッソが吹く。 ベニー・グッドマン楽団のオーディションに落ちた
アニタ・オデイをクルーパが拾ってやったのは有名な話だが、そのアニタも歌っている。 

1938年にベニー・グッドマン・オーケストラを卒業したクルーパは自身のオーケストラを持ち、最初のスタジオ録音をした際にこのヘレン・ワードの歌う
"One More Dream" も含まれていて、これは貴重な音源になっている。 このアルバムを企画したのはクルーパ本人だが、この楽曲は編集の際には
思い入れがあって外すことができなかったようだ。 

この時期の白人オーケストラは皆フレッチャー・ヘンダーソン楽団をお手本にしていて、誰の楽団であろうがどの演奏であろうが違いがなく、正直言って
あまりあれこれ聴く意味はないような気がするけれど、唯一、各楽団お抱えの歌手の歌を聴くのが楽しみだ。 楽団側もそれがわかっていて、新人歌手の
発掘には熱心で、そのおかげで多くの歌手たちが楽団を卒業してソロ活動しながらレコーディングして、膨大なレコード資産が残されたのだ。

ここに納められたのは1930~40年代のアメリカの商業音楽の中心だったもので、このレコードをかけているとなんだか古いラジオ放送を聴いているような
気分になる。 正対して聴くというよりは、何か家事でもしながら聴く「ながら聴き」が一番相応しいのかもしれない。 楽団に在籍して色を添えた
サイドメンバーたちの華麗なるキックを愉しめればそれでいい、幸福なレコードだ。


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