廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

実力が発揮された1枚

2018年06月16日 | jazz LP (Metro Jazz)

Pete Jolly / Impossible  ( 米 Metro Jazz E1014 )


若い頃はピート・ジョリーとジミー・ロウルズの区別がつかなくて、あれ、どっちがどっちだっけ? ということがしばしばあった。 どちらも有名な代表作や
誰もが認める名盤がなく、音楽を聴くというよりはレコードを買うことしか眼中になかった当時の私にはこういう演奏家をまともに認知することはできなかった
のだろうと思う。 

一般的には軽い演奏をする人というイメージだけで話は終わっているだろうけど、これを聴けば案外そうでもないということがわかるはずで、しっかりと
ピアニスティックに弾いている。 フレーズの作り方も個性的で、手垢の付いたスタンダードも一捻りすることで退屈さから上手く逃れている。
弾き流しているようなところもなく、かなり力の入ったレコーディングとして臨んだようだ。

メキシコ・シティで歩行中に自動車事故に巻き込まれて42歳の若さで亡くなったベーシストのラルフ・ペーニャとのデュオという形式で、風通しが良く、
すっきりとまとまったサウンドもとても好ましい。 ベースの音もきれいに録れていて、2つの楽器の絡み合いの上手さがしっかりと聴ける。

BGM的に軽く聴き流すようなタイプの音楽ではなく、オーディオセットの前できちんと正対して聴くのが相応しい、本格的なピアノ・デュオだ。
この人のカタログ・ラインナップを見るとオーセンティックなジャズ専門レーベルへの録音がなく、その実力からすると本人もそういう状況にあまり満足して
いなかったのではないかと想像してしまう。 ここらで起死回生の一発を、という想いがあったのかもしれない。 そのくらい、丁寧に作られている。

しかし運の悪いことに、メトロ・ジャズというレーベル自体があまりに地味で、人々の目に留まることも叶わなかったようだ。 どこまでもツイてない。
何だか地味な存在でいることを義務付けられたかのようだ。 でも、それでもピート・ジョリーを知ろうと思うなら、これから聴くといい。
この人の素の姿が捉えられていると思う。


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