廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

クルーナーの草分け

2020年01月11日 | Jazz LP (Vocal)

Earl Coleman / A Song For You  ( 米 Xanadu 147 )


男性クルーナーの元祖はビリー・エクスタタインと言われることが多いけれど、クルーナーというのは本来は静かに歌うイメージで、ああいうド派手な
エンターテイナーに冠するのは少し違和感がある。そういう意味では、クルーナーの草分けはこのアール・コールマンの方だろうと思う。
40年代にアール・ハインズ楽団付き歌手としてSP録音したのを皮切りに、ダイヤル・レーベルなど、活動は地味ながらも徐々に拡がっていった。

ただ、男性ヴォーカルはショー・ビジネスの世界に身を置かない限りは地味な活動にならざるを得ず、それは彼も例外ではなかった。忘れた頃になって
ポツンと録音が残っている程度で、余程好きな人を除いて誰からもまともに認知されることはなくそのキャリアを終えている。

私はこの人がとても好きなのでその音源はSPも含めて主要なものは手許に置いているけど、その中で最も優れているのがこのアルバムだろうと思う。
アル・コーンのワンホーン、ハンク・ジョーンズのトリオをバックにした素晴らしいアルバムで、ジョニー・ハートマンがコルトレーンとやったアルバムを
彷彿とさせる。私が知る限りではアル・コーンの最高の演奏はこのアルバムでの演奏だし、ハンク・ジョーンズのピアノも最高の出来で、バックの4人の
演奏だけを聴いても凄いことになっている。

クルーナーの中では最も低い声で歌う歌手で帯域が広くないので向かない曲での歌唱には難があるけれど、うまくハマると他の歌手には出せない良さを
見せる。このアルバムでもタイトルになったレオン・ラッセルの名曲での歌唱は素晴らしい。ラッセル本人の歌よりもこちらのほうがずっといい。
そして間奏で見せるアル・コーンの演奏の深み。

アルバムの数が少ないのが残念だ。ヴォーカルの世界はいい歌手なのにアルバムが少ないという人が多い、なかなか難しい世界なのだと思う。





パーカーと共演した2曲は33回転で聴けるが、こちらのファッツ・ナヴァロらとの共演はこれでしか聴けないので、しかたなくSPで聴いている。
SPはとにかく面倒臭いので嫌いなんだけど。


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