廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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見た目はイケてないのに名盤になった作品

2020年03月21日 | Jazz LP (Dootone)

Curtis Counce / Exploring The Future  ( 米 Dootone DTL 247 )


何とも言いようのない趣味の悪いジャケットで、ゲンナリする。このジャケットを店頭で見て、買おうという気になる人が果たしているのだろうか。
このレコードがリリースされた1958年と言えば、前年にソ連が人類初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功して、焦ったアメリカは58年にNASA
を設立し、ソ連を追い抜くべくマーキュリー計画をスタートさせて、米露の宇宙競争が幕を開いた。そういう世相を反映してのことなのだろうとは
思うけれど、これはないよなと思う。カーティスご本人はぎこちないポーズで引きつった笑顔をさせられて、何とも気の毒になる。

という困った見た目にもかかわらず、これがなかなか聴かせる力を持った演奏なのだ。ロルフ・エリクソン、ハロルド・ランドの2管フロントに
エルモ・ホープを迎えた珍しい顔ぶれで、一体どんな演奏をするんだろうと興味津々で聴き始めると、案の定グループとしての纏まり感はなく、
トップクラスとは言い難い管楽器もいささか不安定な感じでガタガタしたところがあるにもかかわらず、なぜかグッとくる演奏になっている。

このレーベルは西海岸のレーベルで、ちょうどエルモ・ホープがかの地を訪れていてパシフィック・ジャズなんかにも録音していた時期にあたるが、
彼のダークな音色に導かれて展開される音楽はまさにブルーノート的粗削りなハードバップで、これこれ、これだよ、という美味しさ全開の内容だ。

前回記事のコロンビアのメッセンジャーズの技術的にも音楽的にも遥かにレベルの高い内容と比べると、演奏力も音楽的な仕上がりも大きく見劣り
する感じで、比較するのが気の毒なくらいであるにもかかわらず、ジャズという音楽の魅力が全編に満ちているのはこちらの方なのだ。
特に目立つのはハロルド・ランドで、ロリンズの強い影響下にある胴回りの太いテナーを吹いていて、ブラウン・ローチのバンドがロリンズの後任に
この人を選んだのはこの音色にロリンズを見たからなんだな、ということがよくわかる。

レコードの音質も、マイナーレーベルらしく録りっぱなしの金をかけていない素の音質であるところが却ってこのタイプの音楽にはよく合っている。
粗挽きな演奏であるが故の原石としての潜在的な美しさがうまく再生されて、音楽を魅力あるものにしていると思う。

音楽の魅力とはなんぞや? という難問への答えを考えるヒントを与えてくれる内容で、ハードバップの愉楽に満ちたいいレコードだと思う。
これがもしヴァン・ゲルダーのスタジオでアルフレッド・ライオン立ち合いの下このまま録音されていたら、きっとシビれる名盤になっていただろう。

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