Kenny Dorham & Jackie McLean / Inta Something ( 米 Pacific Jazz PJ-41 )
傑作 "Matador" を録音する契機になったのは、この西海岸でのライヴだったのかもしれない。 この時期、ドーハムとマクリーンの2人は一緒に活動していたようだ。
マクリーンが重度のジャンキーだったのでドーハムは正式なグループという形には敢えてしなかったようだが、それでも演奏の纏まり具合いは見事だ。
リロイ・ヴィネガー以外は東海岸のミュージシャンなので、どっぷりと深いハードバップ色に染まっている。
あまりに完成度の高い演奏なので、曲が終わって拍手が入るまでこれがライヴ演奏だとは気付かないくらいだ。 ドーハムのラッパが非常によく鳴っていて、
他のアルバムで聴ける彼の演奏とは雰囲気がまるで違う。 ブレイキーとのカフェ・ボヘミアでの演奏を思い出させる素晴らしい演奏をしている。 この人は
ライヴになると人が変わるのかもしれない。 ハンドルを握ると人格が変わる隠れ凶暴ドライバーのように。
マクリーンのアルトも太くて重い音がフルトーンで鳴り響いていて、まるでテナーのようだ。 アルトをこんな重い音で鳴らした人は他にいない。 ライヴの演奏を
こうして聴いていると、何だか殺気立った音に恐ろしくなる。 "Lover Man" もバラードの抒情というよりは、もっと違う何かが雰囲気として漂う。
全編が凄い演奏で、たまたま受け皿がパシフィック・ジャズだったというだけで、内容は最高級のハードバップ。 録音も良くて、リロイ・ヴィネガーのベースが
管楽器に負けない音で録られている。 RVG録音だと言っても信じる人がいるんじゃないだろうか。 そういう粗削りで生々しいサウンドでこの圧巻の演奏が
聴けるから長年探していたわけだが、手頃な値段で拾えたのはラッキーだった。