廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ジャック・ウィルソンを見直す

2020年02月16日 | jazz LP (Atlantic)

Jack Wilson / The Two Sides Of Jack Wilson  ( 米 Atlantic 1427 )  


傑作である。どうして誰も褒めない? 安レコだから、なのかもしれない、やっぱり。

ジャック・ウィルソンと言えばブルーノートのアルバムへの言及ばかりだが、やはりまずはピアノトリオを聴くべきだろう。尤も、録音の機会には
まったく恵まれず、レコード期のまともなピアノトリオはこれくらいしか残っていないのではないか。リロイ・ヴィネガー、フィリー・ジョーが
バックに付いているんだから、悪いはずがない。そう考えて手に取るとこのアルバムが圧巻の仕上がりであることが判り、これ、最高だよ、と
一人で小躍りすることになる。

まず、このレコードはフィリー・ジョーのドラムの風圧の凄さ、ヴィネガーのベースの轟音に殺られてしまう。この2人の音が生々しくクリアに
録られていて、ピアノトリオとしての快楽度MAXなサウンドを体感できる。特に、ヴィネガーのベースの正確無比で強い音圧は最高だ。
ベース好きなら耳が釘付けになり、身悶えするレコードになっている。

ファースト・サイド、スロー・サイド、と分けられた編集で、A面のアップテンポの楽曲でベースとドラムの快楽を味わえるが、B面のバラード集では
ウィルソンの美音に酔わされる。コードの鳴り方が美しく、レガートなフレーズも優雅で、楽曲のしなやかさが見事だ。

とにかく上手いピアノを弾く人で、その演奏力の高さには圧倒されるけれど、そこには嫌味な印象はなく、楽曲を音楽的に聴かせるのが上手い。
豊かなピアノトリオの音楽を聴いたなあ、という深い充足感が残る。もっとたくさんのアルバムを残して欲しかった。

1964年のモノラルプレスだが、このレーベルのイメージとは裏腹に音質はとてもいい。楽器の音色に艶があり、音場感も自然だ。時期的にステレオ
プレスが当然あるので、そちらも気長に探そう。レコード屋に通う楽しみは尽きない。


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