Ornette Coleman / The Shape Of Jazz To Come ( 米 Atlantic Records SD 1317 )
今年のレコード漁りで個人的なトピックスの1つは、このステレオ盤を拾えたことだった。
このアルバムのモノラル盤の音の悪さに気が付いたのはCDを聴いた時で、これはどうしてもステレオ盤を探さねばと長年探していたのだけれど、
これがまったく見つからない。並みいる有名な稀少盤もこのステレオ盤の足元にも及ばないなあ、とここ数年はもう探すことすら諦めていた。
そういう個人的な懸案の1枚が今年ようやく解決した。
楽器の音色の輝きが増し、音楽の高級感がアップして聴こえる。無理やり中央に音像を寄せ集めた感じからは解放されて、音楽が自然な様子で
空間の中を舞っているように変わった。これでようやくモノラルとはおさらばできる、と早々に処分した。
レコードを買っている人であれば誰にも「個人的な懸案盤」があるだろう。これだけはどうしても欲しいとか、持っているけど傷があるから
買い換えたいとか、その動機は人それぞれだが、おそらくそこに共通しているのは自分の中だけのどうしても譲れないこだわりではないだろうか。
そしてそのこだわりはあまり他人には理解できない(言い換えると、他人からみるとかなりどうでもいい)類のものだろう。でも、この自分にしか
わからない自分にとっての大事なこだわりこそがこの趣味の根底を支えていて、これが枯れた時にこの趣味は終わりを迎えるのだろう。
コロナ禍がひと段落して中古市場の状況は大きく様変わりしたが、それでも2020~21年頃の中古の流通が鳴りを潜めたあの耐え難いストレスから
解放される程度までには中古市場は復活しつつある。願わくは来年は更に流通量とスピードが増して、価格がコロナ前のレベルまでは下がって
欲しい。中古レコードの流通は人々の営みそのものを映し出しているのだから。