廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ソニー・クラークが西海岸にいた頃

2019年06月19日 | jazz LP (Fantasy)

Cal Tjader / Tjader Plays Tjazz  ( 米 Fantasy 3-211 )


カル・ジェイダーがソニー・クラークとブリュー・ムーアを迎えた1955年の録音に、ジェイダーがドラムで参加したトロンボーンのボブ・コリンズの
カルテットによる別録音音源を追加して12インチとして発売されたもの。 お目当ては前者のセッションだけど、コリンズとのセッションも
味わい深い演奏で、これはこれで悪くない。

まずはソニー・クラークに目が行くけど、西海岸時代のクラークはまだ駆け出しの時代で、録音されたものは出来不出来がはっきりと分かれる。
私の聴いた範囲ではバディ・デフランコとのセッションは優れているが、それ以外の録音はどれもパッとしない。 そんな中でこのジェイダーとの
録音はまずまず。 一聴してクラークとわかるわけではないけど、予備知識抜きでも印象に残るピアノを弾いている。

それに比べて、ブリュー・ムーアはファンタジー・レーベルでの2枚のリーダー作と同様の個性を見せており、こちらはわかりやすい演奏をしている。
レスター、ゲッツ系統だが、まだ覚束ない感じの演奏だ。 西海岸に来たのは競争の激しいニューヨークではやっていけなかったからかもしれない。

ジェイダーのヴィブラフォンは冴えている。 どの曲も演奏時間は短いながらもひんやりと冷たく、音色もきれいだ。 フレーズは淀みなく流れ、
音楽の清潔さを決定的なものにする。 この頃の西海岸のジャズは、何かに追い立てられるような東海岸のそれとは違い、レイドバックしている。
ウエストコースト・ジャズが好きな人は、きっとそういう雰囲気に惹かれるんだろうなと最近になって思うようになった。

ただ、カル・ジェイダー自身の音楽はそういう特定の色はついていない。 ナチュラルなジャズである。


コメント
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