Eddie Bert / Let's Dig Bert ( Eddie That Is ) ( 米 Trans-World TWLP-208 )
あの世に行く時に何枚かレコードを持って行っていいよと言われたら(そう言ってくれるといいんだけど)、これはその中に必ず入れるつもりでいる。
結局、自分にとって一番好きなレコードというのは世評とは一致しない。 意識的に音楽を聴けば聴くほど、そのギャップの大きさは拡がっていく
のだろうと思う。
エディ・バートのトロンボーンはマイルドな音で、演奏スタイルも中庸で特に目立つこともない。 それが結果的に音楽を前面に押し出しすことになって、
余計な雑念が沸くことなく音楽に没頭できる。 ハンク・ジョーンズやバリー・ガルブレイスらの堅実な土台の上で、トロンボーンとテナーがゆったりと泳ぐ。
Davey Schildkraut という無名のテナーがなんと魅力的なことか。 ハスキーがかった深みのある音で、音楽に寄り添うように立っている。
そういうしっかりとした演奏技術に支えられて旧いスタンダードを交えながら緩急交互に演奏が進んで行くが、全体的にはノスタルジックでゆったりとした
印象の音楽にまとまっている。 この望郷的な雰囲気は筆舌に尽くしがたい。 寒い冬の早朝、どこかで焚き火をした残り香を嗅いで、遠い故郷を
思い出すような独特の切ないムードが漂っている。
こちらは第2版で、これが一番よく見かける。 エデイ・バートという人もトロンボーンという楽器も人気はまったくないから、どちらもいつも800円くらいで
転がっている。 音質はどちらもまったく同じで、マイナーレーベルにしてはまずまず良好。 完成されたモノラルサウンドが心地よい。
尤も、クールジャズでもないのになぜ "Cool" なのかはさっぱりわからないし、エディ・バートをDigするからと言ってショベルカーへの尋常じゃない
こだわりを見せたりする感覚もよくわからない。 マイナーレーベルというのはつくづく不思議だと思う。 これじゃ、誰も買おうなんて思わないよね。
売る気があったのかどうかが疑わしい。