Lambert, Hendricks & Ross / The Hottest New Group In Jazz ( 米 Columbia CL 1403 )
ヴォーカリーズをグループでやった史上初めての試みで、これは大成功だった。 3人全員が上手過ぎるくらい歌が上手く、歌手としての個性もそれぞれが
ユニークでカブることもなかったため、揃って歌い出した途端に予想を大きく上回る効果が生まれている。 中庸な白人男性、アーシーな黒人男性、
英国の淑女、こういう3人を組み合わせるなんて、一体誰が考え付いたのだろう。
ここに溢れ出しているジャズのフィーリングには興奮させられる。 "Mornin'" や "Twisted" なんて原型の雰囲気をそのまま再現していて、下手したら
こちらのほうがクールでカッコいいくらいだ。 そして一番の驚きは "Summertime" をマイルス&ギル・エヴァンスのアレンジでやっていること。
こんなこと、どこの誰が思い付いて、そして実行するだろう。
既にある何かを模写する、というのはすべての芸術における最も原初の衝動だけど、だたごく稀に、模写する側の個性が原型を凌駕することがある。
その時に生まれる衝撃には初々しく大きな力がある。 そういう初期衝動のようなものを、このグループには感じる。
衝撃が強い分、その感動は長続きはしないから旬が過ぎるのも早かったけれど、それはそれで良かったんじゃないだろうか。 優れた作品が残ったのだから、
それらを愉しめばそれでいい。 ヴォーカリーズの作品は彼ら以外にも素晴らしいものが少なからず存在する。 ある意味、ジャズの雰囲気が最も
濃縮しているのがこの分野かもしれない、と思うことがある。