Verve のトランペット・レーベルは、厳密に言うと2種類ある。 レーベル外周下部のロゴ名が "LONG PLAY VERVE RECORDS, INC. MADE IN U.S.A.
HI FIDELITY"(写真左側)となっているものと、"VERVE RECORDS, INC. MADE IN U.S.A."(写真右側)となっているものの2種類である。
その箇所以外にも、タイトルや曲名その他のレタリングの文字幅や行幅も違っていて、明確に2種類が別々に作成されたものであることがわかる。
問題は、この2種類のどちらが先に出されたものなのか、そして音の違いがあるのか、ということである。 一般的にはどうでもいいことの極みだけれど、
マニアにとってこれはまったくもってどうでもよくはないのである。 ちなみに、ジャケットの作りはどちらもまったく同じ。
どうもすべてのトランペット・レーベルに2種類あるということでもないようで、短いロゴの方しかない番号のものもあるようだけど、はっきりとはわからない。
ただし、経験的には長いロゴのものの方が数は少ないような印象がある。
"LONG PLAY" とか "HI FIDELITY" のような言葉をわざわざ記載するのは、それが新技術で大いに宣伝する必要があったからだと考えられる。
そういうものが当たり前になってくると、あらためて書く必要もなくなってくるだろう。 そう考えると、長いロゴのほうが時期が早いのか? と思えてくる。
いやいや、初めは普通にレーベル名だけにしていたけれど、もっと売れ行きを伸ばせ、という経営からの要請で新技術の宣伝を織り込むようになった、とか。
そうであれば、短いロゴのほうが先ということもあり得る。 ただなあ、短い期間にモノづくりのほうがそんなに敏感に反応するかなあ・・・
肝心の音質のほうはどうかというと、これがまったく同じ。 マトリクスの記載はどちらも手書きで、例えばA面は "MGV-8319-A 50,758" で、最初の「8」は
「2」と書かれた上から無理やり「8」に修正されたもので、筆跡も文字の大きさもまったく同じ。 また、盤の形状自体もまったく同じである。
これは、つまり、レーベルは最初から2種類用意されていて、盤の製造後に同時に貼っていったものだと考えるのが常識的に思える。
完全に腑に落ちた訳ではないけれど、音の質感が同じである以上、このレーベル違いにはこだわる意味はまったくない、というのがここでの結論である。
そして、そういうことが気になる私は手の施しようがない阿呆である、というのもこれまたどうにも動かしがたい真実なのである。
まあ、それはそれとして、何度も聴き比べてみたけれど、この作品はやっぱりとてもいい演奏だった。 繰り返し聴いても、飽きるということがない。
力をセーブして弾いているところが、結果的に良かったんだろうなと思う。