去年に引き続き「今年僕が『愉楽しんだ』中で良かったもの」を10本ほど上げてみようと思います。今年、旬だったかどうか?は怪しいものがあるかもしれませんが、まあ「僕は今年楽しみました」って事でよろしくお願いします。
■1位 『HUNTER×HUNTER』(キメラアント編完結)
10年に一度の名シーンを見せてもらったと思っています。それ以前に『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編は、様々な人間・間のものたちの“想い”と、“生”と“死”が入り混じった物語になっていて、その終極の頂点に人間・コムギと虫の王の対局があった。素晴らしい大河ドラマであったと思います。
この大河ドラマの前では本来の主人公ゴンも脇役となってしまった感もありますが、そんな事はどうでもいいと言うか…ゴンが、この物語の大きな核である王との関わりを持つことなく、(出会いさえしていないですよね?)ネフェルピトーとの対決の物語に終始した事は、このドラマの多視点性の共有に貢献したのだろうとさえ思います。
…んん、たとえば『機動戦士ガンダム』が、一年戦争という戦争を通じて、様々な人間たちの生き様を描いて行き、その最後の終極の戦いで主人公は「先の世界の境地」に至るという……なんか「ガンダムでたとえると、」とたんに陳腐化してしまうような、気がしないでもないですが(汗)
しかし、『ガンダム』のような、選ばれた限られた物語のみが持つ『大きな物語』と『先の物語』を(『情報圧縮』は、ほとんど使わずに)両立させ完成させた姿が、ここにはあったと思っています。
ラストでウェルフィンやビゼフのような者たちに至るまで「生き残った事」を祝福され、引いては死んでしまった者たちをも悼み/祝福する情景に至って行く、ほんとうに、凄い物語です。
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『HUNTER×HUNTER』~最期の軍儀
▼USTREAM:
『HUNTER×HUNTER』@漫研ラジオ
■2位 『少女不十分』
僕が見たかったものを言語化してもらったような物語…と言えばいいんでしょうか。僕は自分が見たいものって既に多くは言語化して自分の記憶領域に収納しているんですけど、いや、それは自分の莫大な無意識層のほんの一部かもしれませんけど(汗)しかし、その言語化できそうな部分で言語化していなかったものを言語に変えてもらったと言うか…。
たとえば、僕は『私の愛した悪役たち』なんてコラムを自分のサイト内で書いたりして、「僕は『悪役』が好きだ!」なんて公言しています。その中には相当、非人間的、非倫理的な奴らも含まれるのですが、妙に持て囃したがる「いいわ、この人、大好きだ!」とか言いたがる所がある。…で、それは「自分は“異形”の者が好きなんだ」と言うところまでは言語化していたわけですが…。
『少女不十分』には、それを一歩進めて「自分は“異形”の者たちが、異形なりに楽しく生きている所、満足して生きている所、そういう物語が見たい」のだな、と言う所まで明示化してもらった感覚を持ちました。とにかく、凄い共感がありました。そして、その共感は、僕の中の相当コアな部分を抉っていたのは間違いないです。
「お前はその性格のままで一生生きていくんだよ!変われやしねーんだ!別の誰かになれたりしないし、違う何かになれたりしねーんだよ!そういう性格に生まれついて、そういう性格に育っちまったんだから、しょうがないだろ!もう済んだことで、終わったことで――今とつながっていようと昔は昔で――言うならただのキャラ設定だ!否定したってなかったことにはなんねーよ!文句言ってねーで、頑張て付き合っていくしかないだろうが!」
「オッケーオッケー、気にすんな!ドンマイだ!不幸だからって辛い思いをしなきゃいけねーわけじゃねーし恵まれないからって拗ねなきゃいけねーわけじゃねえ!やなことあっても元気でいいだろ!お前は!お前って奴はこのあと、何ごともなかったような顔をして家に帰って、退院したお父さんとお母さんと、またこれまでとなんら変わらない、おんなじような生活を送ることになるんだ!一生お父さんともお母さんとも和解できねえ、僕が保証する!万が一幸せになっても無駄だぞ、どれほどハッピーになろうが昔が駄目だった事実は消えちゃくれないんだ!なかった事になんかならねえ、引き摺るぜえ!何をしようが、何が起ころうが不幸は不幸のまま、永遠に心の中に積み重なる!忘れた頃に思い出す、一生夢に見る!僕達は一生、悪夢を見続けるんだ!見続けるんだから――それはもう決まっちゃってるんだから目を逸らすなよ!」
(『猫物語[黒]』P.270より)
去年のベストで取り上げた『猫物語[黒]』ですが、このシーンとかそうですね。阿良々木くんが、羽川翼さんを“善人の化物”扱いするシーンで、かつ“善人の化物”である事を止めた羽川さんに、また“善人の化物”に戻れと、本当のお前は「化物である事を知っているお前」ではなく、「その化物こそがお前」なんだと。それを否定するなと。すごく好きなシーンです。
元々、西尾先生の“お説教”には、共感する事が多く、妙に好きだったんですが、その理由が分かった気がしています。
また、『少女不十分』を読むと、それまでの西尾維新作品が、一本筋を通して観ることができるようになって、改めて西尾維新ファンになりました。…まあ、「ネタばらし」をしたら、さっと次のテーマに転進してしまうかもしれませんが(汗)それも含めてぼちぼちと追って行きたいです。
▼USTREAM:
物語三昧ラジオ~『少女不十分』
■3位 『魔法少女まどか☆マギカ』
振り返ってみると、僕が今年一番[愉楽しんだ』アニメは、やっぱり『魔法少女まどか☆マギカ』だったと思います。…僕の周りだと、妙に冷めている感想というか「ウェルメイド」な位置づけで落ち着いている人が多い気もするんですが……「ええ!?なんで?そんな事ないでしょう!」(`・ω・´)…って思いますもん。
ただ、けっこう複合的というか画面作りの演出の妙とか、あるいはイヌカレーの魔女世界の表現とか、あるいは「魔法少女の系譜」的な話とか、そういった諸々の「良い/好き」が全て集まって、僕の「『まどか☆マギカ』好は面白い!』が形成されているので、一部欠けたり、テンションが落ちたりすると違った観え方になるかもしれませんね。
しかし、そうは言っても、まどかの「子ども離れした決断」とか、ほむらの「子どもっぽい決意」とか、やっぱり好きなんですよね。彼女らの分からない所を、ずっと『読ん』でいったのが、僕の『まどか☆マギカ』の一番のめり込んだ所ですが、充分な感動を返してもらったと思っています。
まあ、あと何と言ってもキュゥべえですけどね(笑)僕の友達が、彼を「究極のラスボス(の一人)」に数えていましたが、非常に納得するものですし、僕も最初から在る『祭壇』(最後に主人公に問いかけをするモノ)のように評したりして記事も書いていますね。
クラッシックなアニメの名作群と肩をならべて、遜色のない、名作だったと思います。
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『魔法少女まどか☆マギカ』~決意と祈りの物語
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『魔法少女まどか☆マギカ』と『風の谷のナウシカ』その結末に宿るもの
■4位 『やる夫が鎌倉幕府の成立を見るそうです』
▼泳ぐやる夫シアター:
やる夫が鎌倉幕府の成立を見るそうです 巻第一
記事に書こう書こうと思っていて未だに書けない…(汗)しかし、今年一番、「泣けた物語」でした。鎌倉幕府成立期~源平の合戦の時代は、源義経がヒーローで好かれていて、彼の物語はマンガなんかでも多く作られているのですが、その反動というか義経を主人公にすると、かなり悪役っぽいというか、性酷薄な扱いを受けやすい源頼朝と北条政子の物語……じゃなかった(汗)それを通して見届ける事のできた“足利一族”の『物語』です。
このブログで言うと
「もう一つの『まおゆう』」という言い方が、一番、食いついてもらえるかもしれませんね(笑)実際は、ものすごい大河ドラマで、様々な観方があってなかなか一口には言えないんですが…。
その政治能力、政略能力がチートレベルまで振り切れている、とある夫と妻が「争いのない世界」を目指して、「丘の向こう」を見ようとして修羅道を突き進む物語です。そして『まおゆう』のように上手くはいかず、数十年の歳月をささげても、なお、平和未だ来たらず…どころか、様々な火種を残して幕を下ろして行く物語です。
その気高き理想を追う姿は『ガンダムSEED』と良く合っていて(笑)源頼朝がキラ・ヤマトで、北条政子がラクス・クラインなんですけどね。いい視点なんです。
ある意味、源頼朝の持つ高い政治視点や指標(と、想像されるもの)は、それくらい“高い理想”に基づいたものだったと考えないとしっくりこないくらいなんですよね。「出世したい!出世して自分の家族と、仲間たちを皆守りたいんだ!」くらいなら“平清盛”でいいんですよ。
そして、存命中はその途轍もない政治能力を奮って理想に邁進した彼らをして「丘の向こう」の到達には至らなかったその物語は、人間の歴史として非常に胸を打ち、心揺さぶるものがありました。…ラジオとかやったのですが、まだまだ言い足りないんですよね(汗)まあ、どこかで記事にしたり、またラジオしたりしたいです。
▼USTREAM:
物語三昧ラジオ~『やる夫が鎌倉幕府の成立を見るそうです』
■5位 『放浪息子』
原作も良いのですがアニメ版ですね。あおきえい監督の「その物語を変えない再構成」がよくって、特に最終回は胸が締め付けられました。
先ほどの『少女不十分』に通じる話ですが、二鳥くんはある意味“異形の子”なんですよ。いや、作中で会話があるように「それが普通の子という事」でもあるんでしょうけど、今は、彼の「女の子の格好をしたい」という想いは“異形”のものとします。
そうして考えると最終回の倒錯劇の開幕での、万来の拍手は、僕には非常に「残酷なもの」に思えたんですよね。だって以前の話で、二鳥くんが決意して女の子の格好で登校してきた時、大人たちは有無を言わせず二鳥くんから、その格好を剥ぎとって大問題にしたんです。クラスメートは二鳥くんを奇異の目で見て、時に意味もなく意地悪したりしたんですよ?
それが「舞台の上なら拍手するよ」ってのはどういう事?と僕は思いました。「舞台の上でなら許してあげる」なんてのは、恐ろしく傲慢で、残酷な仕打ちに僕は思えたんですね。
…でも、何と言うか“そう”なんですよ。世界は良くも悪くもなく。万来の拍手は残酷であると同時に、間違いなく「二鳥くんの存在を皆が祝福してくれている」証なんですよね。…そうしたらもう、胸を張って舞台に上がるしかないですよね。自分を傷つけるであろうと分かっているその舞台に。
本当の自分を分かってくれない、皆、認めてくれない式に、声高に悲鳴をあげる行為は僕はどうも好きになれないんですが、逆に『少女不十分』の「(誰も分かってくれないかもしれないけど)でも、それで大丈夫なんだ。とにかく大丈夫なんだ」という語り、あるいは、この二鳥くんのように胸張って舞台にあがる姿は、すごく好きです。
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アニメ『放浪息子』フラワー・オブ・ライフから『物語』を抜き出す。
▼USTREAM:ハイライト:『放浪息子はどこまでも~』の話題
■6位 『神のみぞ知るセカイ』
『HUNTER×HUNTER』が週刊連載作品と言っていいかどうか分からない(笑)と、するなら、今年、週刊連載の中で一番『愉楽し』ませてもらったのは『神のみぞ知るセカイ』でした。
まあ、このブログの中では一番記事として取り扱っている、一番、僕のおたく魂に火をつけてくれている作品なんですが、特に、今年の「攻略ヒロインたちの逆襲」と「ハクアの格の上がり方」は良かったです。
“終り”に向かって着実に進んでくれている安心感も良いです。他愛もないギャルゲー・フォーマット・ラブコメが、ここまで来れるという描きが、物語内のテーマとしても、物語自体の格も、一体になって上げている。凄い連載です。
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今週の一番『神のみぞ知るセカイ』~攻略ヒロインの逆襲がぱない(`・ω・´)
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今週の一番『神のみぞ知るセカイ』~ハクアの物語昇格がぱない(`・ω・´)
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今週の一番『神のみぞ知るセカイ』~“落とし神”の臨界
■7位 『日常』
毎回、腹を抱えて笑っていました!(`・ω・´) 「くすっ」…みたいなのじゃなく、マジ笑いって久しぶりだったかも…?ネットなんかで「クソつまらん!」みたいな意見を時々、見るのですが、本当かよ!?とか思ってしまいます。そんなに笑いのツボって違うものなんですねえ…(汗)
気がつくと今年のアニメで一番繰り返し観ていたかも。・校長が鹿と格闘する話、・ゆっこがコーヒー頼んで「ちょ~苦ぇえ!」話、・みおちゃんが超キレて「ゆっこ何て言ったと思う?」って言う話、あたりが特に好きです。
▼USTREAM:ハイライト:『日常』の話題
■8位 『シュタインズ・ゲート』
ストーリー的に良かった…という事もあるんですが、ヒロインの牧瀬紅莉栖の造形が異様に良かったです!(`・ω・´) ルイさんが、よく言うように、本当に「おたく慰撫のヒロイン」なんですけどね(汗)その慰め方が尋常じゃなかったというか……単純におたく主人公をヒロインが「でも、好きなんです!」と言えば慰撫っちゃ、慰撫なんですけど……そうじゃない詰め方、リアルな詰め方…でもなく、おとぎ話的な詰め方とでも言うか、そういう「幻想的な慰撫」…???……なんか、自分でも何言っているのか分からなくなっていますが(´・ω・`) そういうモノが牧瀬紅莉栖には宿っていました。
…この8位は、本当はシャルロット・デュノアが居る『インフィニット・ストラトス』とどちらにしようか迷っていたんですけどね(汗)『物語』全体としては『シュタインズ・ゲート』の方が良かったと思います。ヒロイン格としても、牧瀬紅莉栖だとは…思いますが、シャルの相当捨て難い(汗)まあ、ほぼ同率8位だと思って下さい。
▼USTREAM:ハイライト:牧瀬紅莉栖【Steins;Gate】の話題
▼USTREAM:ハイライト:『シュタインズゲート』の話題
▼USTREAM:ハイライト:『シュタインズゲート』の話題
■9位 『結界師』
今年、完結した物語として『結界師』を上げておきます。非常に淡々とした『物語』であり「感動した!」、「泣いた!」、「萌えた!」、あるいは「笑った!」という感情の昂ぶりのようなものは無い、少ない…と言っていいように思いますが、その物語の細かやさ、またこれも群像劇と言っていいものですが、その重厚さ、存在感は、上位に上げた作品群に引けをとるものではなかったと思います。
あと、良守の“お母さん”ですね。今回、色々な局面で引っ張ってきている言葉である“異形”の、正にその人間で、完結後、ず~っと気になっているキャラです。僕は異形が好きだし、異形を分かりたい人なのでしょうね。このどうにも掴み所がないお母さんの事を、少しでも何を観ている人だったのか分かりたくてしょうがないのですが、ある程度考える事ができた部分もあるのですが、やはり茫漠としている所は茫漠としたままです。…月並みですが「もっと評価されていいキャラ」に思っています。
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今週の一番『結界師』…とは如何なる物語だったのか?
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『結界師』は『祭壇』の無い物語なのか?
▼USTREAM:
『結界師』@漫研ラジオ(その1)
▼USTREAM:
『結界師』@漫研ラジオ(その2)
■10位 『C』
実は、この記事を書こうと思った時から「何を10位にするのか?」だけは、何を1位にするか?よりも先に決まっていました。それがこの『C』です。(`・ω・´) …何とも惜しい作品ですし、その惜しさを『愉楽しんだ』とでも言えばいいのでしょうか。
…たとえば『東のエデン』についてですが、あれはかなり好きで入れ込んでいるファンも多いと思います。しかし、その何割かは、あの作品が必ずしも成功した物語だとは言えない事を感じつつ、理解しつつ、「それでも、だからこそ、好き」というスタンスをとっているように観えます。それと同じです。僕にとっての『東のエデン』が『C』なんですよ。『東のエデン』も好きですけどね。それくらい実験というか、先取り感がある物語でした。
なんか今のギリシアのニュースとか読んだりすると勝手に『C』のOPテーマの『マトリョーシカ』のBGMとかが聞こえて来て、ギリシアから“C”(崩壊)が起こっているビジョンが浮かんだりするんですよね(笑)…まあ、実際、正にああいうものを語った作品でしょう。
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『C』最終話 control(未来)~出口のない現代寓話
…さて、ここまで。文字数間に合っているかな?(汗)それではこの一年ありがとうございました。良いお年を。(´・ω・`)