
伊藤悠先生の「シュトヘル」の第1巻買ってきました。………ちょっとまだ内容を掴みかねているのですが、どうも中国の南宋時代にチンギス・ハーンの侵攻によって滅びようとしていた西夏と西夏文字にまつわるお話みたいですね。西夏侵攻の先発隊となったツォグ族の王子ユルールは西夏で生み出された西夏文字が、王国と共に滅びゆくのを惜しみ、一族の元を抜け出して西夏文字を記した“玉音同”を南宋へと運ぶ事を決意する……かな?(汗)シュトヘル(亡霊)というのは、そのユルールと共に度をする事になった、女戦士の事のようなんですけど……なぜ彼女がシュトヘル(亡霊)と呼ばれるようになったかは、これからのお話のようです。
や、ちょっと自分なりに粗筋書いてみたんですけど、構成が複雑で多角的でまだどんな話か分らないんですよね(汗)1巻読み終わっても、方向性が分らない物語というのはどうかと思うんですが、それでも、妙にこの話に惹きつけられているのは、僕が邦画で1、2を争ってめっちゃめちゃ好きな映画「敦煌」を思い起こさせてくれるからなんですね。(というか、この「シュトヘル」って、井上靖の「敦煌」と「蒼き狼」を足して二で割ったような作品ですよね?)この映画、もの凄く好きなんですよねえ。漢人部隊の隊長・朱王礼(西田敏行)と、西夏の初代皇帝となる李元昊(渡瀬恒彦)が異様にカッコいいんです。にも増して敦煌の莫高窟から発見された数万もの文書が、何故そこに埋められていたかという事を確信的に語る原作・井上靖の物語がよくって…。

趙行徳「この教典や本を安全な所に運んで隠す」
朱王礼「それが命を賭けてやる程の価値がある事か?」
趙行徳「わからん、でも今の俺にはやらねばならん事だ」

趙行徳「あれは、財宝なんかじゃない…紙くずだ」
尉遅光「紙くず!?……嘘だ!!」
趙行徳「紙くずだ……貴様にとっては教典と書籍というただの紙くずだ!!」
…もうね。人が死に、国が滅び行く中で、そこに在った文字(文物)だけは燃やされまいとするロマンが好きでね。もう、それだけで僕はなんか涙が出てくるんですよね。本当にねえ……人も、国も、必ず滅びるんですけど、文字は人が遺そうという意思を示す限りは遺って行くんですよね…。でも、人が要らない燃やそうと思えば、簡単に消え去ってしまう。そういう物語ですね。
…故にユルールは、自分が幕を出れば使用人が処刑される事を知りながら、それを守るために、ある時は人を欺き、ある時は人を殺める事を知りながら、旅立つんですね。歴史を振り返れば、中華大陸にほんの一時だけ輝きそして消えてしまった文字、“西夏文字”を守るために…。ここらへんの“人の生命に代えても”って気持というか、この感覚に僕はすごく感動するところがあって、その感覚に突き動かされているユルールを追う意味で、とりあえず「シュトヘル」という物語につき合って行こうかな?と思っています。……正直、まだ面白くなるかどうかもわかないんですけどねwそれに本当の所どういう物語になるのかさえ、まだ「読め」ていません(汗)……でも、ま、か細い糸に想いを託して千秋を越える「敦煌」のような物語には、なかなか出会えないんで……もしかしたら“それに”出会えるかもしれないよなあ~って事と、マンガ版の「皇国の守護者」描いた人が描く物語って事でちょっと楽しみに思ったりしています。
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