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『結界師』は『祭壇』の無い物語なのか?

2011年07月11日 | マンガ


今週、7/13(水)の夜に、『結界師』(田辺イエロウ)のUSTREAM放送を予定していまして、それについて、ちょっと僕が触れて置きたい視点の話をします。(↓)まず『結界師』終了直後に書いた記事ですが、ここで述べているように、主人公・良守のお母さん事、墨村守美子の検証はしておきたいなと思っています。謎多き最強母さんなんですが、この人は本当に謎というか…僕の中で、なんというか「ああ、この人はこういう人なんだな」感で呑み込めない所が多く、正直、この人の為にラジオを計画している所があります(汗)

今週の一番『結界師』…とは如何なる物語だったのか?

それとこの『物語』を一から全て観直してみたんですが、僕の感じた一つの特徴として『祭壇』が無いという視点に言及しておこうとも思っています。『祭壇』というのは、最近、僕がこのブログでやたら記事として取り扱っている観方なんですが……まず、最初の考え方の記事を張っておきます。(↓)

「祭壇」という元型(アーキタイプ)に関する追記
ナウシカと墓所の対話の話をする前に、いくつか押さえておきたいポイントがあります。一つは、彼らの対話のシーンは「物語」のある種の定形としてよくあるシーンで、僕は「祭壇」という呼び方をしています。「祭壇」とは何かというと、ある「物語」…まあ、大抵、戦って戦って戦い続けるタイプの物語が多いのですが、そういう「物語」の主人公が最後に辿り着き、そこで対面した“何か”と対話するシーンですね。
そこで彼らはある種の哲学的な議論~主人公は大抵、難しい事を考えられないので、シンプルな答えのみを返すのですが~を交わします。多くは敵対勢力の“悪の理論”と、主人公の“善の理論”の激突が行われてきましたよね。そこでの対話が、何か“神様”にその物語の在り様を告げるというか、逆に神託を受けるかのような、“神との対話”という印象を持ったので「祭壇」と呼んでいるワケです。

まあ、手前盛りの言葉に対して、有るも無いもないって所はあるかもしれませんが(汗)ここで言いたいのは、少年向けというか、ある種のわかり易さのためにSFやファンタジーと取り入れた物語には「このお話は、つまり、こういう事でした!」みたいな結論を言う場所が出現する事がけっこうあると思うんですよ。
たとえば『結界師』に非常に似ている……いや?なんとな~く、似ている雰囲気の作品として、これも最近完結した『鋼の錬金術師』(作・荒川弘)を上げたいのですが、複雑なキャラクターの絡みや、群像、ストーリーを盛上げながらも、どこか淡々と計算的に話が進んで行く様とか…似ていると思うんです。しかし、『鋼の錬金術師』には集束すべき“決着点”と、そして『祭壇』が、はっきり用意されているんですよね。



“真実の扉”のシーンがそれです。ラストフェーズで主人公のエドは真実の扉を前に自分の答えを返します。それは「この物語の答え」という事でもあるはずで、あれが答えだとするならば『鋼の錬金術師』という物語はつまり…と、『鋼の~』の作品論は、また別の機会にするとして……。つまり、こういうものを『祭壇』と言っているわけですが…。

『結界師』はこういった“分かりやすく”結論が述べられている場所が存在しません。『祭壇』が無い物語というのは、ある意味で“リアル”なんですよね。今、この“リアル”って特別な意味で使っていますが。現実世界では「この物語(人生)はこういうことでした!」と言う場面はほとんど存在し得ません。それがあるのは、本来、その意味において『祭壇』が出現するのは、その物語がテーマを持った物語であるからこそのもので、それが見当たらない『結界師』は、妖術・妖怪・超能力大決戦のファンタジー・ストーリーであっても、その“在り方”はあくまで“リアル”なんだと言えます。

しかし、『祭壇』はあくまで解釈の産物なので、解釈次第では『結界師』に『祭壇』を見出す事もできます。僕が一応祭壇候補として考えたのは(↑)冒頭に掲げた画像がそれで、あれはもう一人の主人公とさえ言えるはずの兄・正守と結界師の開祖・間時守の幽霊(?)が対話をするシーンです。
高空の雲間から世界を足下にして語られる「世界を恨むな」の言葉は、かなり『結界師』のテーマであろうものに近いものを感じます。あるいは烏森封印の最終段階での母・守美子と良守の“対話”のシーンを祭壇としてもいいかもしれません。しかし、どちらも祭壇的明確さに欠ける面もあるんですよね(汗)~そこでテーマを語ってしまうというある意味野暮ったい行為は“明確さ”が大前提のものと言えます。~時守との対話は兄・正守から(意志決意の)語りが無いですし、守美子との対話は良守は打ちのめされすぎな面があります。

まあ、そこらへん考慮しつつ、僕は「『結界師』には『祭壇』がない」という観点が、この物語を『読む』のには合っていると思っています。ラジオではそんな感じにいろいろ『読み』解いて行けたらなと思います。


結界師 (1) (少年サンデーコミックス)
田辺 イエロウ
小学館


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