今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

「医龍」19巻

2009年02月17日 | マンガ


ちょっと折りを見て「医龍」の話がしたくて、最近、全巻購入しました。
この物語……んんんっと、大雑把に言うと「ヒロイック白い巨塔」とでもいいましょうかwある大学病院で、医局の改革の野望を持った女性助教授・加藤晶が……って、ちょっと、今、粗筋ごちゃごちゃ言うのは止めておきますが。それよりも、この作品、けっこう人間ドラマが熱い物語で、もともと好きで読んでいたんですけど、そこからある一線を超えた時、さらに惹きつけられまして、もう目が離せない連載になってしまったんですよね。その一線って何かっていうと、この作品、天才の事を描きはじめていて…。「天才の物語」に弱い僕はその時点でコロリと舞ってしまっています。

もともと、この話、先ほどいった加藤助教授が、自分の論文を完成させ、教授選で教授になるために朝田龍太郎という外科手術の“天才”を連れてきた事から始まるんだけど、この朝田“しきたり”の厳しい医局の中で、好き勝手に振る舞いながら不思議な魅力と圧倒的な技術力で、回りの者達を問答無用に巻き込み、駆り立てて行くんですよね。それが今、その状態でさえ、朝田にしてみれば眠れる獅子の状態だった事が分ってきた展開なんですよね。いままで彼と手を組んで来た加藤を始めとする仲間たちを「うざったい!」とばかりに振り捨てて自らの道を突き進んで行く。朝田の本心がどこにあるかは分りませんが、今はそんな展開なんです。

それまでも、圧倒的な技術力で物事を解決して行く朝田が描かれていて「それは充分、天才の物語じゃないの?」っていう人もいるとは思うんですけどね……でも僕の分類では、それはスーパー・ヒーロー…「英雄の物語」であって、この誰もついて来れない!!感が足りないというか…天才の醍醐味の一つは間違いなくこれなんだ!って思っていますw
そして、加藤の仇敵とも言える男・権力の妄執者である野口教授に強烈なシンパシーを感じている。…朝田はそうは言いませんけどね。でも、本当は人を救うべき医局の中で、ただただ権力闘争に明け暮れた男の孤独に、もっとも自分と同じ臭いを感じ取っている。そう思えます。それは、野口も同じで……互いに腹の内を探り合いながらも、今、二人ともすごく楽しそうですw

そんな感じに、教授選の候補者三人を中心にして、医局全体を巻き込んで、天才達と、秀才達と、凡人達が、それぞれ己の矜持をかけて戦う(生き抜く)のが今の「医龍」の展開なんですよ!w

…で、今週(もう先週か)のスペリオール買ってきたんですが、この号でねえ……もう、僕が観たかったものの一つは描かれてしまったような気分ですよ?大動脈瘤を煩っている野口教授の手術を新しい術式で挑もうとする(それをしなければ野口を治せないと診ている)加藤に向かって、力を貸して欲しいと頼まれた麻酔医・荒瀬は、弱々しく言い放ちます。



荒瀬「野口のじいさんは、朝田や国立……バウマンみたいな超人に任せておけよ」

国立というのは加藤と同じ教授候補(天才+権力の男)で。この時、加藤も荒瀬も、朝田に振り落とされているんですね(少なくとも現時点では)。また、麻酔医・荒瀬は、飲んだくれだったりしますけど、技術は間違いなく一流で、明らかに“天才っぽい”男だったんですけどね……この荒瀬が、振り落とされてしまう、今の展開にシビれていますw……で、そうすると加藤が答えるんですね。
加藤「その朝田でも救えない患者はいる。伊集院くんが必死で血液を運んでも救えなかった患者がいる。(そういうエピソードがある)あの時の手術室にあなたもいたのなら、術式の進歩の意義がわからないはずがない」



加藤「どんな天才でも、おのれの技量以上に人は救えないけど、術式の進歩はそれを可能にする」

加藤を論文の天才、術式の天才っていう言い方をする事もできるとは思うんですけどね…。でも、この時の加藤は朝田に振り捨てられた加藤で、明らかに「秀才の矜持」として、このセリフを吐いている。天道天賦足らざるとも全力で前に進む者の意地が胸を張るのですよね。胸の透くシーンです。
これより先んじて「医龍」の中ではずっと「凡人の物語」を描いていて、これも熱いのですが、今回、割愛。…あ、今、分りやすく「天才」、「秀才」、「凡人」って言ってしまっていますけど、人間の色調ってもっと複雑で、それは「医龍」の中にも顕われていると思います……たとえば、ここの加藤や荒瀬は、朝田やバウマンに比べれば、秀才という事になってしまいますが、他に対しては“抜群”の者たちである事は間違いないんですよね。…で、今、「凡人の物語」に後れて(?)「秀才の物語」と「天才の物語」が描かれようとしています。これを描ききる事ができたなら「医龍」は「途轍もない物語」になるんじゃないかとw今からどきどきしています。(誉め過ぎかw)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿