
このマンガ(原作・結城浩、作画・日坂水柯)、下巻がなかなか出ないな~と思っていたら、2009年7月23日に発売との事。うんうん。…数学の話題を中心にした三角関係を描いたラブコメなんですけど。数学(思考)とラブコメ(感情)の絡め方のバランスが良くって、読んでると何かとても(両方面で)満足感を得てしまう不思議なラブコメです。
不思議な…というか“数学”のからめ方が上手いのですかね?たとえばラブコメの中でけっこう悩み所だったりする“どうやって出会うか?”というポイントについて、この作品では“数列クイズ”を使っている。「1、1、2、3…(その次は?)」というものなんですけど、主人公はこれに答えるんですよね。次の問題は「1、4、27、256…(その次は?)」で、それも答えてしまう。……そりゃあ、気が合うだろう!wと思うんですよねwいや、気が合うなんてもんじゃなくって、それらさっと答えてしまう人間に出会うのは、沢山の人間の中から、そうである人を「見つけた!!」と言ってもいいモノになっているワケです。冒頭でここまで(「強く」思える繋がりを)持ってくるのはかなり有用で、その後の話をかなり「沸点」近く進められるんですよね。
そういった具合にこの作品で“数学”はキャラを組むのにも有効に使われていて、この2点に割って入る女の子でテトラちゃん(…なんてシンプルな名前なんだ…)は、主人公の後輩で数学を教えてもらっているんですが、多くの生徒が数学を学ぶ時にスルーしてしまうような所に疑問を持ってそれを投げかけて来たり、まあ後、単純に一生懸命学んでいる姿勢とかで“可愛い子”を出しています。…「なんで“1”が素数ではダメなのか?」とか、オイラ考えた事無かったよ?…うん。(´・ω・`)←文系
逆に主人公は、こういうテトラちゃんの疑問に優しく分かりやすく答えて行きます。…という事は主人公も同じ疑問を持った……とは限らないけど、ともかくテトラちゃんの“分からない世界”を分かっているんですよね。…そりゃあ惚れるわ、というか“良い人”だと思う。…でも、この“先生”と“生徒”の関係が、先に述べた「見つけた!」よりも「弱い」、距離が遠い関係なのも分かる……切ないねえ、と思う。
ヒロインのミルカさんは、主人公よりも先の世界を観ている。…この場合“憧れの人”と表現するのがいいのかな?一見すると、主人公>テトラちゃんの関係の反復に観えない事もないんですが、それはちょっと違っていて、この二人は既に数学の世界を旅しているのですよね。テトラちゃんは、とても熱心な子だけれども、まだ、この世界を旅する一線を越えていない……でも、二人は越えている。だから「見つけた!」のであり、その後一緒にいるのはとても自然だ。この差はとても大きくて、テトラちゃん可哀想だなあ…などと思いながら読むワケですが、同時に、主人公がミルカさんが好きなのはすっげええ分かる。そりゃあね、自分の行く世界の先にいる女の子なんて、好きにならないワケがないって感じでw

登場人物は、今言った主人公(良い人)、ミルカさん(憧れの人)、テトラちゃん(可愛い子)のほぼ3人でとてもシンプルな構造です。そして“数学”という素材をとても機能的に絡めてくるので、話の進め方もシンプルで、それこそ数学が最終的にシンプルな式を求めるが如き“美しさ”がありますね。…そしてこれは作画の日坂先生のセンスじゃないかと思っているんですけど、第2話でミルカさんは、主人公の隣に座っていたテトラちゃんを突然思いっきり蹴っ飛ばすんですよね。ミルカさんはあんまり表情を出さない子なんで、このシーンが最初の「見つけた!」の「強さ」を顕わしているシーンと言えるんですが…もう、このシーン、好きで好きでw「あ!分かった!wミナまで言うな!w」とwいや、もうホント、言葉要らないよ!w
そこらへん、初速でドン!と行くのがシンプルな物語をより加速させていますね。まあ孤を描いて落ちる所に落ち着く話なんだろうなあ…と思っていますが「それを見たいね!」という気にさせてくれる作品です。
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