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『うみねこのなく頃に』~長い、長い、魔法と心の旅の結末

2011年02月06日 | その他
[同人PCソフト]うみねこのなく頃に散 Twilight of the golden witch[第5話~第8話]
07th Expansion
07th Expansion

『うみねこのなく頃に』ep8(最終) 終わりました!いや、良かった!僕はどうもゲームをやる習慣が失くなってしまった人なので、クリアまで相当時間がかかりましたが、楽しかったです。ちょっと先にネガティブな事を述べさせてもらうと、この『物語』、けっして冗長じゃないワケではないし、ストーリーも、推理劇も、穴がないと言うにはちょっと苦しいものだと思います。しかし、それを超えて魅力的なゲームでした。(※真相はちょっと腑に落ちない所も残っているので、これはまた詰めて行こうと思っています)
『うみねこのなく頃に』(作・竜騎士07)は、伊豆の孤島“六軒島”に住まう大富豪・右代宮金蔵の遺産相続をめぐって、親族会に集った右代宮の一族が、奇怪な連続殺人に見舞われ、全員が死亡する。一族かあるいは一族の招来を受けないと立ち入れないその孤島に現れた怪人物・魔女ベアトリーチェの正体を巡って、事件の真相が様々な錯綜をはじめる…そんな『物語』。



最初は、フィクションとメタ・フィクションを交えた先鋭的な『物語』構造に興味を惹かれました。…いや、読んでて、魔法かトリックか?推理は可能か?不可能か?などと言うんですが「いや、いきなり、魔女ベアトリーチェが現れて、異空間で戦人と会話している時点で、証明終了ちゃうん!?…って言うか、推理は可能か?不可能か?とか言っている横で“奇跡の魔女”とか、“絶対の魔女”とかが、ビシバシ推理不能な魔導繰り出しているんですが、それは何でスルーですか!!?」…と、いろいろ状況理解というか、この『物語』の“癖”のようなものを呑み込むのに苦労したんですけどねwそれはそれで、凄い愉しかったと言うか「尖り過ぎた物語は、叙述や構造が異形を取るものだよね。ふむふむ、こういう事の描写をしようとするとここら辺が苦しくなるのか…」という、それに接する快感がありましたね。

しかし、正直この物語に“心を打たれる”とは思っていませんでした。いつもの僕のように、半笑いで、したり顔で、「ん、まあ、面白かった。なかなか参考になったよw」…くらいの感想を述べて、それで終わりだと思っていました。
…告白します。僕は『うみねこのなく頃に』に、もの凄い共鳴を起こしました。シンクロ、じゃないですね。音叉を鳴らすと、側にあった音叉も響きだす、あんな感じです。『うみねこ』の中で、紡がれる言葉やメッセージは、僕のかつての“心の旅”と酷似していた…のだと思います。心の底に沈めてあった音叉を、妙に、変な調子に叩かれるんです。吐きそうな感覚すらあった。
…と言っても、僕は取り立てて不幸な生い立ちも、人生を激変させるような特異な体験もしてきていない人なので「酷似」なんて言葉を使っても、大いに誤解、誤動作の可能性もあるワケですけどね(汗)でも、それでもね…
「ああ…、その景色を僕は見たよ!僕はそれを確かに見たんだ…!」
…と叫びたくなった。まあ、ちょっと誰にも伝わらない話かもしれませんが(´・ω・`;)…でも、これは必ずしも勝手な拡大解釈というワケでもないはずで、『うみねこのなく頃に』は、そういう心の核が発する“一なるもの”をとても大切に取り扱っている物語ではありますよね。まあ、ここでそれが何かを詳しく書き留めるつもりもないですが。

■真なる結末は…

ところで僕はクリア前にも『うみねこ』をクリアしていた人の感想などを軽く目撃していたのですが、これが、あんまり評判よろしくないようです(汗)僕自身は取り立てて不満足な点も、「これはイカンだろう!」という局所の指摘も特にないのですが、かと言って、穴や、拙い面がないワケではないので、それらにあまり反論する気はおきないです。どこが気に入らなかったかは人によって、けっこう違う気もしますしね。
しかし、この物語の結末に対する反論というか…自分は反論というつもりは丸でないし、多分、それで良いはずだと思うのですが、ちょっと言及しておきたい事があります。

※注意!ネタバレ入ります!

何かと言うと、基本選択肢というものを全く用意していなかったこのノベル・ゲームが、最後の最後に、二つの選択肢と二つの結末を与えます。しかし、その選択は、仮にA、Bとしますが、その場の雰囲気というか、直前まで戦人くんが積み上げていったメッセージを鑑みると(?)…Aを選ぶしかない?ような感じがするんですよねw
そうして、実際に、Aを選ぶとトゥルー・エンドっぽい結末を迎えて、Bを選ぶとバッド・エンドっぽい結末を迎えます。まあ、この時僕はBを選びました。で、その終わり方を気に入りはしたんですが……「ん~(考)何か全体の雰囲気からするとバッドエンドって事かな?」と思い、その後でAを観たんですよね。そうするとまあ、Aの方がトゥルーっぽいw
…何がトゥルーで、何がバッドって基準があるワケでもないですが、一般的にはそう見えるって事でいいのかなという気もします。…で、今、バッドエンド扱いした選択Bについていきなり翻して「いや、これバッドエンドじゃないよね?」というのが僕の話です。
※ 最後の二つの選択肢は、物語のもう一人の主人公・右代宮縁寿に与えられます。事件のあった1986年10月4日~5日に、彼女は体調不良のために島に訪れず、事件に出会う事がなかった。一人、生き残った伯母の右代宮絵羽は、遂にその真相を明かさず息を引き取る。右代宮家最後の一人となった縁寿は、その遺産の相続を巡る追っ手を振り払いながら、12年前の六軒島の真相を追い求めて行った。その旅の果ての選択肢になります。

その選択肢とは一言で言うと「魔法を肯定するか?(A)」、「否定するか?(B)」です。…実はそう単純ではないんですが、これは後で補足します。ともかく長い旅の果てに“その様な”選択を与えられる。
この選択肢、僕からするとBしか無いのですよね。ほぼ速攻でした。無論、Aが頭を霞めない事はないです。また、周りに合わせるというか「優しさを振りまく」ためだったらAでもいいのでしょう。しかし、この選択肢は「六軒島事件の真相」という迷宮から縁寿が抜け出て、そして「どのように生きるのか?」という生き方を示す局面での選択です。
それは、もう、Bしかない…というのが僕の選択です。だって、先に述べた、僕が“心を打たれた”景色って正にそこなんだもの。


「ごめんね。魔女がこの世界のどこかにいるかもしれないことを、私は認めるけれど。でも私の世界は揺るがない。」
「……魔女も魔法も、認めない。六軒島の真実は、必ず暴いてみせる。……でしょ?」
「えぇ。それが私の世界よ。仮に本当に魔女が存在したとしても、私の世界では認めないわ。当の魔女に、どれだけ言い寄られてもね。」

(『うみねこのなく頃に』ep.4 より)

先ほど説明を単純化するために「魔法を肯定するか?否定するか?」という言い方をしましたが、縁寿は魔法の存在を否定はしない。それどころか、この時の彼女は魔法とは何なのか知っているし、その使い方も身につけている。そして、それを使えば幸せになれる事すら、解っているのですよね。
でも、彼女はそれを選ばない。…ここ、ちょっと説明が難しいですが、彼女は多分、魔法を捨てるわけではない。また、魔法を使わなくなるわけでもない。きっと思い立つ度に使い続けるのでしょう。……でも、心の一番大事な場所には置かない。心の核にはしない。その宣言をするのが(↑)上のep4のセリフなんです。
本当は魔法を否定するワケではないけど“その意志”を示すためには、二択なら否定する方を選ぶしかないんですよね。

それはねえ…兄貴に何をごちゃごちゃ言われようが、揺るぐものではないと思うのです。生き方を示せと、その選択肢を与えられたら、それはもうBなんだと。
……いや(汗)ちょっとここで引き戻りましょうwさっきまで僕は自分の選択を肯定するロジックを都合良く組んできたワケですけど、じゃあ、Aの選択肢の意味は何か?っていうと、それは「優しく生きる事」と解する事もできます。さっき「優しさを振りまくためだったらAでもいいのでしょう」と言った正にそれで、それを心の一番大事な場所に置くなら、それを心の核にするなら、それでもいいのでしょう。

また、縁寿にこの選択肢を与える本来の主人公・右代宮戦人は、そうして欲しいのでしょう。戦人は、最初ずっとBを、何があってもBを選ぶことでこのゲームを続けてきたのですが、真相に至ってその選択をAに変えた。だから縁寿もそれを選んで欲しいと……むwそう考えると「やっぱり戦人の逆を行くのが良くない?バランス的にw」とか思うけどwまあ、ちょっと続けます。

どちらの選択肢を選ぶとしても、その意味はある。だからその選択肢は等価値なのでしょう。作り手も、これまでずっと選択肢なしでやってきたゲームに対して「ここで“正解”を選べ」という問題を提示したとは思えない。縁寿が選択すべき、選択し得る“道”だから提示されたのだと考えます。
そして、どちらか一方を決めた者に対して「そっちは、ハズレでした!残念!」などと決めつける事を、由としない事を、ずっと、ずっとこの物語は描き続けてきたはずです。


「「グッド!」」

(『うみねこのなく頃に』ep.8 より)

でも、“奇跡”が起こるのはAかもしれない。Aを選んだ縁寿はやがて奇跡の物語に巡り遇う。そしてBを選んだ縁寿は冥府魔道に墜ちたかもしれない。確かに二つの選択による二つの結末はそのように別れています。それもまた納得出来るものがあります。
しかし、僕は声を大にして言いたい。「それは望む処!」と。真実の魔女ヱリカと顔を見合わせて「「グッド!」」と声を合わせるシーンの何と気持ちの良い事か。これがバッドエンドだったとしても、僕の気持ちを充分満足させるエンドだった事は間違いないです。

…いや、それにBの方が“猫箱”でっかくってわくわくしねぇ?(`・ω・´)Aの方ってさ、もう“アガリ”寸前まで描いちゃってるじゃん?それに対してBは、縁寿の『物語』は“ここから”はじまってるんですよね。
これからの縁寿がどうなって行くかは測り知れないですが、たとえば、ヱリカみたいな推理探偵紛いの事をするようになってさ?強引に真相を暴き立てるんだけど、でもヱリカよりは、ちょっとだけ優しかったりしてさ?その上でグランドストーリーでは、右代宮財閥と須磨寺家に今だに生命を狙われ続けてて、縁寿も逆襲を期しているとか……よくね?そういうの?(`・ω・´)(…ああ、これが二次創作かw)

■世界が変わること…

この物語で提示される二つの選択肢について、僕はどちらを選ぶか?って話をさせてもらいましたが、もう一つ、選択肢が存在する事の意味、「二つの結末を見ることができる」意味を、書き添えておきたいと思います。
これは多分、小此木社長に焦点を合わせると分かりやすいかと思いますが、彼は縁寿に協力するサポートするように見せかけて、裏では殺害命令を出していたんですよね。しかし、この選択肢の一方では、縁寿はその小此木社長を味方につけて~自分を殺そうとしていた事は知る由もなくなっているんですが~おそらくは幸せな結末を迎えて行きます。この意味は大きい。

「裏で(真相)は私を殺そうとしてた!許せない!」じゃなくって。心の在り方を変えるだけで、そういう者さえも味方に変えて、正しい道を進んで行ける。本当は世界はそれくらい簡単に変わるんだよとこの話は言っているのでしょう。
この物語の“魔法”という概念に合わせて語るなら、それは「魔法は人の殺意さえもなかった事にできる」とでも言えばいいのか…外側からは母に愛されていない娘のように見えた真里亞が、どんな世界を観ていたのかという、それが垣間見えるのではないかと思います。

そんな処で。複雑な物語構造と、推理と、素晴らしいテーマ、あらゆる角度から僕を存分に『愉楽』させてくれた物語でした。


※以前のUSTREAMラジオです。(↓)僕がep5あたりをクリアした所での、推理と真相予想の話をしています。
【『うみねこのなく頃に』@漫研ラジオ】
(その1)http://www.ustream.tv/recorded/8980998

(その2)http://www.ustream.tv/recorded/8982124

(その3)http://www.ustream.tv/recorded/8983623



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2011-02-06 20:08:53
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13518933
これおもしろいですよ
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お疲れさまでした~。 (かんで。)
2011-02-08 21:45:50
ぜひまた、うみねこについて語りたいところです。
よろしくです。
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Unknown (LD)
2011-02-09 01:08:45
Re:Unknownさん

観ました。面白かったです。…ところで『IS』は僕も好きです。(´・ω・`)


Re:かんで。さん

『うみねこ』ちょっと語りたいですねえ~。飲みでも、ラジオでもw
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