「あそこ(月)には何から何まで運び込まなくてはならない。贅沢な観光施設だわ…!そんな不利な事象があるにも関わらず、そこにあって誰にでもわかりやすい存在、それだけの理由で簡単に月を目的地にしてしまう安易な政策…!!」
「アステロイド・マイナーズ」買ってきました。…もう、痺れましたよ。(=´ω`=)「月はもういい!!」と言い放つ、あさりよしとお先生の科学愛というか宇宙開発愛に!w多分、上掲した「宇宙暮らしのススメ」が元ネタ(買っておこう)になっていると思いますが、宇宙開拓(敢えてこう言いますが)をするにあたって、一般にイメージされるモデルでは月あるいは火星などを中継点とする事を想像していると思います。でも、それだと大質量の惑星衛星の重力圏を脱出する労力資材、また着陸する労力資材がバカにならない。……そうではなく、比較的、軽い推進力で楽に星から星へと移って行ける小惑星帯(アステロイド)こそ開拓に最適な“土地”だろう。ただし…………………
水が有るなら!!という話だと思うのですが…ちがうカナ?(´・ω・`)…まあ、とにかく「月じゃない!先だ!!フロンティアはあっちなんだ!!」っていうシャウトは、宇宙開発ネタの名作を送り出してきた、あさり先生だからこその力強さがあります。今回はそこらへんの作品も併せて紹介したいです。
■なつのロケット
「お前のロケットは「ごっこ」だから100年かかっても飛びやしないけど、俺のは飛ぶ必然に従って作っている。(できもしない事はやらないと自分は言ったが)“できる事”だからやってるんだよ!」
科学の面白さを教えてくれた先生が辞める。その恩返しとして夏休みの自由研究でロケットを飛ばす事を思いついた小学生たち。しかし、奇妙な少年“三浦”が話に加わってからロケット製作は小学生のレベルを超えたものとなり始める……って話なんですが、この「(ロケットを飛ばすために)必要なことなら何だってやってやる!」と言い放つ少年・三浦くんの鬼気迫るロケット作りが強烈な印象に残ります。ホントこのキャラ大好き!物語を牽引するキャラってこういう奴の事を言うのだよ!(`・ω・´)
この三浦くんの「絶対にロケットを飛ばす。そのためには手段を選ばない」という意志力。どこか「プラネテス」(作・幸村誠)のウェルナー・ロックスミス博士と重ねて観てしまう所があります。その“悪魔に魂を売る”かのような執念は、つまり、ロックスミス博士のモデルと言われるフォン・ブラウン博士の宇宙開発に懸けた姿勢を模した結果と思われるのですけど……フォン・ブラウンが本当にああいう“キャラ”なのかは僕は知りませんwしかし、月へ行くという彼の生涯をかけた目的の為に作られるロケットが、兵器開発と密接に関わって来たのは事実です。第二次世界大戦でドイツ軍が使用したV2ロケットは元より、戦後の亡命先のアメリカ陸軍でもフォン・ブラウンはロケット兵器開発に従事しました。また、宇宙開発用のロケットだって、核弾頭を搭載するICBMの開発を抜きでは考えられません。
軍に協力した=悪魔に魂を売った、という単純図式もどうかと思いますけど、しかし、たとえ「悪」と言われても~フォン・ブラウン自身が、
「宇宙にいく為なら悪魔に魂を売り渡してもよいと思った」と言っているらしいですが~月へ行くという自分の望みに邁進し続けたフォン・ブラウンの姿勢に、僕らはどこか尊敬してしまう。…というより涙してしまう。何の得があるか分らない。本当に人類にとって必要な事かどうかも分らないのに、ただ「月へ行きたい!」という決意だけでそれをやり遂げてしまったその執念の姿勢にです。Wikipediaのフォン・ブラウンのページでこんな記述がありますね。(↓)
SS(ナチ親衛隊)とゲシュタポ(国家秘密警察)は、「(軍事兵器の開発に優先して)フォン・ブラウンが地球を回る軌道に乗せるロケットや、おそらく月に向かうロケットを建造することについて語ることをやめない」、としてフォン・ブラウンを国家反逆罪で逮捕した。フォン・ブラウンの罪状は、「より大型のロケット爆弾作成に集中すべき時に、個人的な願望について語りすぎる」、というものであった。
ドルンベルガーは、「もしフォン・ブラウンがいなければV-2は完成しない、そうなればあなたたちは責任を問われるだろう」とゲシュタポを説得し、フォン・ブラウンを釈放させようとした。しかし、それでもゲシュタポは許そうとせず、最後はヒトラー自らがゲシュタポをとりなし、ようやくフォン・ブラウンは解放された。そのときヒトラーは「私でも彼を釈放することはかなり困難だった」と言ったという。
まあ、どのくらい事実かっていうのもありますが…単に月旅行にうつつを抜かしているだけじゃなくって、ドイツ陸軍にロケット開発に絶対に必要な人材と認めさせているのがカッコ良過ぎ!
■まんがサイエンスⅡ
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「ところでV2号って何だかミサイルみたい」
「ミサイルだよ。アルコールと液体酸素を燃料にして300Kmをマッハ4.5で飛ぶ…人殺しの道具さ」
「月へ行きたいんじゃなかったの?」
そんなフォン・ブラウンが登場しているマンガがこの本ですね。僕はもう本当に感動して宝物みたいにしている1冊なんですけどね。地球に落っこちてしまった“ロケットの神様”を、子供のよしお君とあやめちゃんがロケットに関する知識を学び、神様を宇宙へ返してあげるというのが第一部。第二部では宇宙に戻って力を取り戻した神様が「お礼にもう一度宇宙旅行をさせてあげよう」と言い出す。その時に子供たちの間に割って入ったのがフォン・ブラウン(第一部の終盤で登場)で「というワケで月へ行こう!キミたち!宇宙ステーションとか、スペースシャトルとかはいいよ!タダで行けるんだ!地球にへばりついている事はない!」と言い出して、自分が月へ行くことはなかったもんだから、この機会とばかりに強引に月旅行を決めてしまう。…もう、ここらへんの展開だけで大好きなんですがw
それまでツィオルコフスキー、ゴダードと順を追って説明されていったロケットの物語は、フォン・ブラウンがあれよあれよと独壇場式に月旅行の説明までしてしまい、月に飛び立ってしまう。そうして月に降り立ったフォン・ブラウンが
「…月だ!月だ!月だ!わーい!!」と大喜びで飛び出て行くシーンは…もうね、どれほどの想いでこのセリフがあるのかと思うとね…何回読んでも泣けてしまう(涙)…というか、あのシーン観て泣けなかった人、ごめんなさい。あんまし、この文章読んでも意味無いかもNE。(`・ω・´)
そのフォン・ブラウンの月への想いを描いているあさり先生だからこそ、この「月じゃない!その先なんだ!」という物語の意味は「強い」。月は僕らを宇宙へ誘うための大きな道標だった。そこにはフォン・ブラウンが到達した。そのフォン・ブラウンの後に続くなら、“星を継ぐ”なら、目指す場所はもう(道標としての)月じゃないだろう。その先の物語を描いてこそなんだ、って思いに溢れている。…続刊なんですか?「ステロイド・マイナーズ」どこまで描いてくれるのか楽しみです。…でも、途中で止まっていても全然問題ない感じでもありますね。この物語はいつだって“未完”のはずだからw
探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力
おまけとして「探査機はやぶさ」の動画を貼っておきます。(「アステロイド・マイナーズ」の中にも名前が出てきますね)これも紛う事なき“星を継ぐ者”の物語です。弥栄あれ。