セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

歴史劇と「チャングム」

2005-05-15 22:40:01 | チャングム
前日のつづきで。日本ではテレビドラマでの歴史事実の扱いかたは、時代劇と歴史劇ではかなりちがう。つまり歴史劇では時代考証がかなり厳格になされて、歴史事実に違っていると視聴者からのクレームが多く寄せられる。だが時代劇ではかなりいい加減だ。時代劇とは、古い時代を舞台にしているが中身はアクション劇や人情話やロマンス物。歴史劇は歴史的な人物や事件を描くことを目的としたドラマ。時代劇では「隠し目付け」とかの歴史的事実としてなかった(あるいは知られていない)役人がでてきたり、江戸時代の前・中期で侍が「わが藩」などと言ったり、ありえないことが許容されている。
ではチャングムは時代劇か歴史劇か。チャングムという人がいて女医という低い身分で最後に王様の主治医になったことは記録に残っているらしい。だが分かっていることはそれだけで、スラッカンの女官をして料理を作っていたと言うのは作者の創作だ。このことについては文句がない。不明なことを創作するのはよい。ともかくチャングムという歴史上の人物を描いたドラマだし、実在の王様や権力抗争事件もドラマの大きな道具立てだ。だから歴史劇にまちがいない。
「チャングム」を見ると、韓国では歴史劇でもかなり自由に歴史事実の改編が行われると思われる。「チャングム」を楽しんで見ているが、僕が気になるのはこのこと。つまり見ている人が歴史的事実と思い込んでしまい、それが一種の共通認識になってしまうことだ。その予防か番組の終わりの解説で歴史的事実と違う点の説明があるが、あれはNHKの判断で日本だけにつけられたものではないだろうか。
外国の歴史ドラマなのに、僕がこんなことを懸念するのは、ヨン様が広開土王の歴史ドラマをやるってことを聞いたからだ。広開土王は4~5世紀の高句麗の王様。中国吉林省で発見された石碑にその事績が書いてあるが、日本の古代朝鮮半島へ関与についても記載があり、韓国と日本の歴史学者の解釈で論争がある。ドラマ制作となると歴史資料の少ない時代のことであり、創作が多くなるのは当然だが、あからさまに歴史事実を無視したものが流れ、それが韓国の「常識」となるのは避けてもらいたいと思う。