salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・ロックだわ、と思ったらパンク

2007-08-21 01:50:27 | 本・雑誌
糸山秋子さん(イトという字は糸が二つ並ぶ)の
作品はどれも好き。
なんていうか、リズムがいい。
ロックな感じ?
重量感あり、いい意味での陶酔感あり
バラードでも「魂」感じさせる強さのような。

と思っていたら、今回読んだ本は
パンク好きの元過激派の話。

『エスケイプ/アブセント』(新潮社)

大事なものとか信じるものとか
守ってきたつもりが
実は人生をムダにしてきたと気づき
それでも何か、見えているのに見えてないものを
追いかけているような話。

心の声の正体や、諦観を感じながら
あらゆる真実とフェイクを行きつ戻りつ。
特別な事件も、目をひくようなハプニングもない。
それでも主人公が
たしかに前進していると感じる。

世の中や自分と、何とか折り合いをつけて
生きている登場人物たちに、好感。

祈りも愛も、結局は自己中心で
それを責められるものではないし
ないよりあったほうがいい、なんて思ったり。

「エスケイプ」に続く、「アブセント」はまた
種明かし的おもしろさ。

糸山さんの小説、読後はいつも
やるせなさと静かなエネルギーを感じる。