salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・不覚にも? 泣けちゃうよ。

2007-08-10 01:26:25 | 本・雑誌
同窓会やクラス会の類が苦手で
学生時代の友達が、当時のことを
やけに思い入れたっぷりに話すのを聞いていると
なぜかいたたまれない気持ちになるのは、なぜだろう。

記憶を消したいほどの出来事が、あったわけでもない。
嫌なことも、楽しかったことも
みんな今の自分をつくっている、という感覚はあるのだけど。

なので、今回読んだ本みたいなのは
本来、私には合わなそうなんだけど
どんどんどんどん引き込まれてしまいました。

『永遠の出口』(森絵都・著 集英社)

ひとりの少女の小4から高校卒業までが
一年ごとに、一章ずつ丁寧に描かれてゆく。

幼さゆえの残酷さを持つ時代。
尖っているのに、もろくて壊れやすい時代。
どこか冷めた目で、世の中を眺め始める時代。
自分の見ている世界が狭いことを
知らないまま動いている時代。
先が見えないまま、どこへも行けないでいる時代。

10代の変化は大きい。
たぶん、自分で感じているよりも。
心も体も人間関係も。
頼りなく、感じやすい心をさらけ出しながら
あれやこれやを受け止めて
その先を生きていく、心の基礎体力みたいなものを
つける時間なのかも。

今日のことだけ考えていればよかったのが
明日のこと、1月先のこと、1年先のこと…
を考えなければならなくなり
だんだん笑ってばかり過ごせなくなり
だけど、目をそらすことも身につけるようになる。
そんな人間の成長する姿は、たとえありふれていても
(テレビドラマみたいなことがなくても)
心が動かされる。
そんなお話です。

友達との関係、家族との関係、恋愛、
どれも多かれ少なかれ、楽しさと苦しさとを伴い
だけど、成長するためのエネルギーでもあるのだと思った。

最初の、小学4年生の章と
最後の、高校卒業の章が好き。
小学生が子どもなりに人に気をつかい
それによって苦しくなる姿はとてもせつない。
高校卒業のとき、少女がその先に見ていたもの。
自分の高校卒業の日のことなんて
いまひとつ思い出せないけれど
この話を読んで、たしかにそこにあった
未来への期待が、少しよみがえる。

正直、最初の数ページを読んだときは
「これは児童文学…、というか
読者対象はどのあたりなのか??」と戸惑った。
けど、これは大人こそ読むべきものかもしれない。

かつての自分が見ていた未来に立っている
「今」の自分を省みるためにも。