salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・私の読解力不足でしょうか。

2007-08-19 00:52:46 | 本・雑誌
何年か前の、小説すばる新人賞で
デビューした作家、三崎亜紀さんの本、初体験。

『となり町戦争』(集英社)。

半分くらいまで読んでも、見えてこない。
普通の会社員が、ある日突然
町の広報で、戦争が始まることを知り
しかも、役場から連絡があり
いきなり任務を課せられ
偽装結婚までさせられる。

なんじゃこれ??

銃声がするわけでもない、戦いを目の当たりに
するわけでもないのに、なぜか死者だけは増えてゆく
となり町との戦争の話。

一体この戦争は何なのか?
戦時のリアルさを実感できないままでいる主人公と
そのまんま同じような気持ちで、読み進めてゆく。

ある意味、忍耐がいりました。
淡々としてます。
舞台にお役所がからむせいか
話もすべてが手順を踏んで、進んでいく感じ。

この、「人々の考えている戦争」の
先入観を否定する戦争が
一体、何を意味するのか。
単なるゲーム感覚で書かれたものでないことはわかる。

途中でやめようかと思ったけど
次第に深まってゆく物語の
その着地する場所を見届けたいがために
意地で最後まで読み通した。

思いがけず、せつない展開を見せ
最後にやっと、血の通った人間たちの姿、
その体温を感じることができた。

そして、やっと見えてくる。
誰かの痛みの上に、人は立っているという事実。
そこに気づく人もいれば、気づかない人もいる世の中。
それはどちらが幸せなのか。

とはいっても、正直、私は
まだつかめてないと思う、この話。
なんだかすっきりしない。

この作品、新人賞を受賞したという事実がある以上、
世の中に問いかけるものがある、ということなんでしょう。