salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

ばななさんの本

2007-02-26 02:08:16 | 本・雑誌
よしもとばななさんの、数年前の小説、
『デッドエンドの思い出』(文藝春秋)を読んだ。
(去年、文庫が出たみたいですね)

5編の話からなる短編集、
表題作の『デッドエンドの思い出』が一番好き。

失恋の痛手のなかで、主人公は
自分と向き合ったり
自分を取り囲むいろんなことや人のことを考える。
そんな息苦しい状況を過ごしつつ
その時期に関わった人、悶々としながら過ごした時間が
かけがえのない「思い出」となっていく。

そう、「思い出になる」にすぎない。
そこに新たな王子様が現れるわけでもないし
一見、なにも変わらない生活が続いていく。

だけど、悲しみ傷つきながらも
実はちゃんと「浄化」されていっていた。
その思い出から始まる時間があり
その後の人生を支えたり、思い出すたびに
温かい気持ちになれたりすることは、たしかにある。
そういう記憶を持っている人は
ちゃんと生きていけるんだな、と思う。

悲しかったり、せつない空気が静かに流れつつ
そこにはちゃんと救いがある、っていうのが
よしもとさんの小説、という気がする。
…なんて、全部読んでいるわけではないので
あくまでも、これまでの印象ですが。

この人の書く小説は、すごく平易な文章で
ヘンにこ難しく言いまわしたりしない分
感情の揺れや乱れまでが
ストレートに伝わってきて、読んでいるほうも
揺れたり、乱れたりするからコワイ。

この短編集を読み、なんとなく
10代の頃の、まだ未来が漠然としていた
よくも悪くもぼんやりとしていた頃の自分を
どうしようもなく懐かしく思ってしまった。
あんまりこういうこと、ないんだけどな。