玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

煽る弁護士、勇気ある弁護士

2007年10月03日 | 光市母子殺害事件
橋下弁護士が「世間」に光市事件弁護団への懲戒請求を煽った番組である「たかじんのそこまで言って委員会」の掲示板で興味深い議論が行われている。

たかじんのそこまで言って委員会|大会議室 橋下弁護士が光市母子殺害事件弁護士から提訴

懲戒請求の“総本山”だけあり、最初のうちは「弁護団けしからん」「世間と常識が許さない」「懲戒請求は当然」という雰囲気だが、一人の勇気ある発言者によって次第に流れが変わってきた。
Re:橋下弁護士が光市母子殺害事件弁護士から提訴 2007/09/12 (Wed) 21:58
  名前:すちゅわーです 年齢:35歳 性別:女

  私は大阪で弁護士をしています。
弁護士の意見は、おそらく100人中、99人までが、橋下弁護士の行ったことに対して憤りを感じるでしょう。
なぜなら、彼の行ったことは、弁護士としての最後の砦になる良心までなくしたことになるからです。
弁護士の良心というのは、例え世界中の人たちがバッシングしても、被告人、依頼者の正当な利益を守ることにあります。


大阪(奇しくも橋下弁護士と同じ)の弁護士「すちゅわーです」さんが弁護士の職務、法廷のルール、憲法の規定、日本は法治国家であり「世間」至上主義は人治につながる危険があること、懲戒請求には責任が伴うことなどをていねいに説明している。
あえて言ってしまうが、ほかの人の意見は後にして「すちゅわーです」さんの発言だけ抽出して読むことをお勧めする。とても勉強になるし、論理的で上手な文章を読むと自分の頭の中が整理され賢くなったようで気持ちいい。

もちろん「たかじん委員会」掲示板に書き込むことで「すちゅわーです」さんに個人的な利益は生じない。ギャラが発生することも名前が売れることもない。それでも「敵地」に乗り込んで責任感と良心から長文を書き続ける「すちゅわーです」さんの勇気と誠実さに敬意を抱かずにはいられない。
弁護士として、それから「人として」立派なのは橋下弁護士のような無責任な煽り屋ではなく「すちゅわーです」さんのような人だ。


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11 コメント

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Unknown (ぽしんたん)
2007-10-03 21:27:34
何か話しが難しい方へ難しい方へ流れていっているような気がして仕方ないです。

私は今回の件で、弁護士に対しておかしいと思ったことを懲戒請求という形で表明されると、弁護士としてとても困るというのは分かりました。
そういった意味で橋下弁護士には多少感謝しています。

日本弁護士連合会
懲戒制度
http://www.nichibenren.or.jp/ja/autonomy/tyoukai.html

このサイトを見る限り、懲戒請求した時の個人の責任はどうなっているのかを、当の日弁連自体が説明していません。
これで「懲戒請求した個人には責任が!」とか言われても、どんな責任が発生するのか余りピンとこないです。
だから、橋下弁護士が無責任に煽った、という意見も余りピンとこないんですよね・・・。
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Unknown (JET)
2007-10-03 22:49:41
>100人中、99人までが、橋下弁護士の行ったことに対して憤りを感じるでしょう。

ならば私はその99人が間違っていると判断しましょう。

>弁護士の良心というのは、例え世界中の人たちがバッシングしても、被告人、依頼者の正当な利益を守ることにあります

これは正論です。しかし、今回の弁護人の態度は依頼人の「正当な」利益を守るものでしょうか?一般論と現実を混同されては困ります。
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Unknown (匿名)
2007-10-04 10:54:16
ご紹介のあった掲示板を読みました。
すちゅわーですさんの書き込みには
改めて考えさせられることが多々あり、
たいへん有益でした。

私自身は今回の被告には極刑を望んでいますが、
反面、将来もし類似の事件の裁判員に選ばれ、
被告に対して極刑を下す判断をする可能性を考えると、
その重みへの恐怖におののく自分がいます。

上記の掲示板から、裁判員制度導入に対する
心構えのようなものを示された気がしています。
この掲示板を知るきっかけを与えていただいたことに
感謝します。
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感謝、そして虚無感 (少数派)
2007-10-04 20:55:43
すちゅわーですさんの書き込みに対する感想は玄倉川さんとまったく同意であり、有益な意見に触れることができ、紹介に深く感謝いたします。

ただ、あの掲示板のやりとりを読み終わって襲ってくるのは正直に言えば虚しさが大きいです。

人の話を聞かない(読まない、曲解する)、自分の感じ方こそが正義であると信じて疑わない(思い込みが激しい)、最後には開き直る(一般人は憲法など知らなくてもいい、など)・・・と、どこの掲示板でも見られる光景なのでしょうが、扱っている話題が話題だけに、これが「普通」の「常識」を持った「善良」な「一般市民」の姿なのかと思うと・・・それも子どもではなくいい年齢の大人たちがこれですから、読んでいて本当に疲れました。

たとえば、「懲戒請求には法的責任が生じます。気をつけてください」という専門家の警告に、「気に入らない弁護士には懲戒請求で辞めさせることができるのだ、困らせることができるんだ、いいことを教えてもらった」という反応がかえってくるのには脱力というか、本当に笑うしかありません(笑いごとではないけれども)。

また、「判決を下すのは、一般市民でもマスコミでもなく、裁判官(法律)である」というのは、それこそ「常識」だと思っていたのですが、そう考えない人が少ないことにも驚かされました。そして「審判が下されるまで静かに経緯を見守る」というのができない人が多いことにも。

私もすちゅわーですさん同様、刑の執行や裁判に携わったことがない、つまり自分は責任を取ることがない立場にいて、遺族でもない一般の人が、係争中である事件に関して軽々しく「極刑を望む」などと口にすることに嫌悪感を覚えるほうですが、こう感じる人間の方がこれから少数派になっていくのでしょう。泣く子と「惻隠の情を持つ善良な一般市民」には勝てません。

「弁護団側からは、常識の方が間違ってると主張されそうですが、確信があります。
一般人の感じてる常識の方が正しいと」

これは掲示板にあった「一般人」の書き込みですが、読んだとき大げさでもなんでもなく恐怖を感じました。

その「確信」とやらの根拠はなんなのか、なぜそこまで断定できるのか、自分が間違うことは決してないと言えるのか・・・などと、その思い込みの強さが恐ろしい。私はもともと裁判員制度の導入には反対の立場でしたが、この言葉、そしてこの掲示板のやりとりを拝見して、その思いが強くなった次第です。


長文・乱文失礼しました。これからも更新を楽しみにしております。
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訂正 (少数派)
2007-10-04 20:59:18
そう考えない人が少ない→×
そう考える人が少ない→○

申し訳ありません。
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Unknown (KAZ)
2007-10-05 09:12:32
医師は救命のためなら、倫理に背くような治療をしてもかまわないのか?
軍人は国を守るためなら、どんな無慈悲な軍事行動を取っても良いのか?

弁護士が使命を貫き通すなら何をやってもかまわないと独り立つのなら、けっきょく法制度への不満・不信を助勢する事にならないのか?
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KAZさんへ (ルクス)
2007-10-06 16:11:32
「倫理に背く」と称して患者を無視して救命を放棄する医師や
「無慈悲だ」という理由で職務を放棄し、国を守らない軍人など願い下げです。
(そんな手段では戦略目的を達成できません、逆効果ですとか戦争犯罪になりますという理由で反問するのは認めます。軍人を指揮し、その行動に責任を負うのは国民が選んだ政治家です)
「何をやってもかまわない」わけないでしょ。弁護士法も訴訟法もあるんだから。「法制度への不満・不信」ってなんでしょうね。「法制度自体への」(改善の余地なし。そのもの全否定)か「現行法制度への」(改善の余地あり。他に理想の法制度がある)かで意味が異なりますが、仮に前者なら法治国家の否定→文明の否定だし、後者なら「弁護士の使命」を否定ないし大きく変えたいってことですかね?
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請求者自身の今後に注目しています (ルクス)
2007-10-06 16:28:52
4000強と報じられた懲戒請求数があれから増えた報がないのを見ると、もう打ち止めでしょうか? 標的が複数いることから考えて、実際の請求者数ははるかに少ない可能性がありますが。

私が注目しているのは、この請求者の中から「騙された!」ことを悟って請求を取り下げ、「よくも騙したな」と橋下弁護士へ懲戒請求出す人間が出るかどうか、という点です。
統一協会に対する「青春を返せ」訴訟など、他人を騙して犯罪行為に煽動した張本人に帳尻をつけさせる動きは珍しくないでしょう。
もちろん、一人も出ない可能性もあります。懲戒請求の真の労力を知り、簡単に騙された自身の愚かさを呪いながら橋下および読売テレビ一味の卑劣さを痛感し、一つ賢くなるか、それとも自分が騙されるような馬鹿で犯罪に加担するような悪人だという事実を認めたくない一心でますますペテン師に帰依し、現実逃避に邁進するか。
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>ルクス氏 (Unknown)
2007-10-06 18:04:31
「懲戒請求に参加された方々が、今後どう感じ判断するか注目する」といいつつ、「今回の懲戒請求が犯罪行為である」と断じておられますが、何を根拠にしているのかご教授願えませんでしょうか。

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ルクスさん (KAZ)
2007-10-07 09:48:05
今回の弁護団の行為は、現行法制度への国民の信頼を失墜させる行為だと、多くの人が感じたからこその懲罰請求、彼ら文明の破壊者への怒りのあらわれだと思います。
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