黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

「『1Q84』批判と現代作家論」-拙著のタイトルです。

2010-12-07 05:46:25 | 仕事
 来年早々の刊行になる新しい拙著のタイトルが決まりました。
『『1Q84』批判と現代作家論』(アーツアンドクラフツ刊)です。収録される批評は以下のものです。、
1.『1Q84』批判-空前のベストセラーとなった村上春樹の新作『1Q84』について、その販売戦略から作品内容まで、130枚ほどで批判したものです。前半部は文芸誌「月光」第2号に書いたものですが、この村上春樹の新作は多くの人が賞賛するほど優れた作品であるのか、作品内容を分析・検討し、結論的には「批判すべき作品である」としたものです。
2.辻井喬論-西武セゾン・グループの最高責任者(経営者)の地位を降りてからますます旺盛な作家活動を行っている辻井喬について、その文学は「転向」から始まるのではないか、と処女作から最新作までを俯瞰的に37枚ほどで論じたものである。
3.立松和平の文学-今年の2月に急逝した立松和平の文学について、その追悼の意味を込めて書いた36枚の概論風の作家論です。
4.野間宏論-『さいころの空』を中心に論じたもの(30枚)
5.林京子論-『トリニティからトリニティへ』について、「希望」をキーワードに論じたもの(20枚)
6.小檜山博論-北海道の地で頑張っている小檜山博の文学について、その「現代文明批判」を中心に論じたもの(45枚)
7.大城立裕論-「沖縄」と「ヤマト」との関係を軸に、沖縄発の芥川賞作家について概観したもの(46枚)
8.三浦綾子論-「北海道」をキーワードに論じたもの(20枚)
9.村上龍・大江健三郎・井上ひさし-3人の作家に共通する「ユートピア」への思いについて論じたもの(20枚)
10.「在日」文学論-①金鶴泳論、②アイデンティティ・クライシスの2側面から「在日」文学について論じたもの(59枚)
 それぞれの文章は、求めに応じて折々に書いたもので、一見すると統一されていないようにも見えますが、全ての文章は「現代社会、あるいは時代と文学はどのように関わるのか」、という観点(持論)を底意に潜めて書いたもので、その意味では「社会や時代との関係」が希薄になってきているように見える現代文学への、僕なりの「否・アンチ・批判」になっているのではないか、と思います。つまり、今度の本で取り上げた作家は、紛れもなく文学と「社会や時代との関係」を重視してきた人たちで、簡単に言えば、僕の「好きな」「気になる・注目してきた」作家たちについて論じたものです。
 その意味では、冒頭においた長文の『1Q84』批判も、僕の勝手な村上春樹へのラブレターでもあります。賞賛の嵐の中で、あるいはオマージュに囲まれて、確かな作品批評のないまま、あれよあれよという間に世界的なベストセラーになってしまった『1Q84』について、村上春樹は「誤った方向」へ行こうとしているのではないか、という思いから書いたもので、何故そのような「批判」を書いたのかは、僕の『村上春樹-「喪失」の物語から「転換」の物語へ』(勉誠出版刊)を読んでもらえれば理解してもらえるのではないか、と思っている。
 なお今度の本は、大学教師生活における最後の仕事になります。また、版元のアーツアンドクラフツの社長は、僕の最初の本『北村透谷論-天空への渇望』(79年)を出してくれた冬樹社という出版社につとめていた人で(担当の編集者ではなかったが、現在でも僕の本を担当してくれた編集者と親しくしているようです)、このことにも奇しき縁を感じている。
 後はたくさんの人が手にとって読んでくれることを願うばかりです。
 刊行されたら、またお知らせします。

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1 コメント

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必ず読ませていただきます (コウ)
2010-12-08 10:20:47
ご無沙汰しております。
相変わらず精力的に活動されていますね。素晴しいです。

御著作は必ず拝読させていただきますので、是非ともお報せください。

寒さも厳しくなってくる時節です、くれぐれもご自愛ください。
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