黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

この国は、どこへ行こうとしているのか?(2)

2011-11-05 10:00:03 | 近況
 書き忘れたわけではなく、推移が不明だったので、敢えて書かなかったのだが、福島第1原発の2号機から「放射性物質キセノン」が検出されたという問題について、東電の発表によると通常の原発運転でも起こっている「自発的核分裂」ということだが、どこかの原子力研究者が言っていたが、何重にも「安全装置」が働いている稼働中の原発における「自発的核分裂」と、メルトダウン・メルトスルー現象が起きているフクシマの場合とを単純に比較するのはおかしいのではないか。つまり、いくら東電が「自発的核分裂」だと言い「問題ない」と言ったとしても、これまでの東電の隠蔽体質、ないしは官僚的な「上から目線」を何度も何度も経験している僕らとしては、もしかしたら2号機では「再臨界」状態になっているのではないか、という疑いを払拭することはできないということである。
 何しろ、事故が起こった原発内部には、スリーマイル島の場合も、またチェルノブイリの場合も、誰も入ったことがなく、従って僕らは「不完全」(爆発事故を未然に防げなかったのだから、現在の原発技術の全てを「不完全」と考えるしかないのではないか)な計器に頼って「問題ない」と思いこまされるしかない、という状態にあるのだ。
 ところで、僕らがフクシマにおける「放射性物質キセノンの検出」という問題に対する東電の検討結果に不信の念を隠せないのは、東電が自分たちに不利と思うことは決してばれるまで明らかにしないという隠蔽体質を、営利を追求する企業としては当たり前なのかも知れないが、恥ずかしげもなくこの8ヶ月間さらけ出し続けててきたからに他ならない。例えば、3月12日の爆発当時から今日まで、東電は原発爆発(事故)が起こった最大の理由は、「想定外」の大津波が来て全ての電源を破壊してしまったからだと言い続けてきたが、それは違うのではないか、今回の東日本大震災を引き超したM8規模の地震によって、津波が来る前にすでに原発は破壊されていた(相当なダメージを受けていた・制御不能状態になっていた)と言い続けている学者や原子力技術者が何人もいるのに、その人たちの意見を聞こうともしない東電、民主党政府の体質(隠蔽体質)こそ問題とすべきなのではないか、ということである。
 僕が分からないのは、そのような「事故原因の究明」もろくにしないまま、日本政府(野田政権)は停止中の原発の再稼働をいとも簡単に許したり、外国へ平気で原発を輸出しようとすることである。まさか、今が良ければ将来がどうなっても構わない、といったこの国の全体を覆っているような「無責任思想」が、東電や政府中枢を蝕んでいるからだということではないと思うが、そのような「ニヒリズム」状態をどのように突破していくのか、皆目見当が付かないところに、また陰々滅々たる思いを深める要因があるのだが、本当に何とかならないものだろうか。
 とは言え、仕事の方は、昨日『立松和平然小説』第18巻の【解説・解題】30枚を版元に渡し、また4,5日前に送った『近代文学以前―「内向の世代」から見た村上春樹』(尾高修也著)という本の書評(4枚弱)ゲラを見て返す、というように順調にこなしているのだが、どうも苛立ちが収まらず、という状態にあるのが、僕の現在である。