牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

牛の角は工芸品になっている

2008-03-21 22:32:20 | 牛の角
牛の角は昔から様々な工芸品に加工され、愛好されてきた。
加工されるのは、主に容器類と嗜好品である。
容器には大きめの角のサヤを抜いて空洞とし、蓋やひもを付けて、野菜や花などの種子を保存する容器、刻みタバコの容器、猟銃用の火薬入れ、柱掛けの花瓶などの実用品として利用されてきた。
嗜好品には、成畜になった牛の角の先端部分が、透明感のある黒色で硬質のため、釦、プローチ、ループタイ、印鑑、数珠等に加工されている。
外国のロングホーンなどは、頭部に角を付けたままや、両角をつなぎ合わせて、装飾品として利用されている。
一般的に家畜は、全身全てが廃棄されることなく、何らかに利用されている。牛の場合も例外ではない。

牛の角の長さは左右同じ

2008-03-20 18:33:44 | 牛の角
牛の角の形は、まさに千差万別である。角の形を見るだけで、その成長過程が様々に伺われる。本来、牛の角の伸び方には、左右で若干の変形が見られるが同じ長さで成長する。牛の角の角質(サヤ)は、伸び始めて1年未満(写真1)のものと、その後、牛が成畜になったものでは、異質のものと変わる。
若い牛の角は、黒くて細かい縦縞があり、ぬれ布などで長時間湿せば、若干柔らかくなる。牛が成長して10cm程度伸びてくると、次第に硬質の角質に変化する(写真2から写真3)。
硬くなった角を磨くと光沢が出る。
上の写真の右の角は、その軟質なサヤが抜け落ちたもので、この場合は、出血によるダメージなどで除角同様に正常な成長が止まったものである。
今後この角が正常に均等に矯正することはないが、均等なだけが格好いいとは言い得ない。

写真3



写真2


写真1

牛の角は意外ともろい

2008-03-19 19:17:58 | 牛の角
外国種をイメージするほど、立派に伸びた角である。この様な角をしたのにロングホーンという外国の牛がいる。この牛は、紛れもなく黒毛和種の去勢牛である。
顔とのバランスは、角の方がやや勝っている。
日本一とも思える角だが、こんな肥育牛の角で飼い主がやられた話は聞かない。
牛の角は、内側に骨のように硬い角質が角の本体部分として伸び、その角質を写真にあるようなサヤが被さっている。角質には、頭部から伸びた角の凡そ中間部まで血管がある。
牛の角は、闘牛などのように牛自身が意識して突き合う場合は、角が折れたり、角のサヤが抜けることはない。
ところが、牛が全く意識していないのに、後方から角を殴るとサヤが容易く抜ける場合がある。5~6cm伸びた若牛の場合は、周りの柵でじゃれている間に、サヤがよく抜けることがある。獣医師によれば、風が吹いただけでサヤが抜けたという報告があるとのことだった。
それにしても、日本人離れしたイケメンと言うが、差詰めこの牛は和牛離れしたイケ去ンかな。

牛の角から値打ちを想像していた

2008-03-18 20:00:42 | 牛の角
牛の善し悪しを評価する項目の中には、角の形や質がある。
雄や雌ではその見方は若干異なるが、形では雄は太く、雌は細くて丸いもの、質では角地が、ち密で黒くて光沢があり、白や赤色でないものがよいとされている。
以前は肥育牛を評価するのに、生体(生きている)牛の肉付き、体脂肪の蓄積具合、角や蹄や被毛や皮膚などを肉質の判断部位として、個々の牛の肉質能力を判断していた。
現在では、直接枝肉(頭部、被毛皮膚、四肢、尾、内臓、横隔膜、さがり、血液を取り除いた部分。筋肉、脂肪、骨、スジおよび腱)を見て判断している。
枝肉による判断は、売買双方が納得する手段であり、生体時の判断にはかなりの当たりはずれがあったが、当時はその方法しかなかった。
だから当時、牛の角は重要な要素を備えていたことになる。
枝肉を判断する限り、角の色や形が必ずしも肉質と密接な関係にあるとは言い難く、専ら角は、牛の容姿の素晴らしさを形付けている特徴の一つでしかない。



牛の角の形は全部違っている。

2008-03-17 22:50:41 | 牛の角
牛の角は、1頭1頭形が違う。角が長いか短い。太いか細い。左右の形や大きさが違う。角の色や光沢が違う。形では丸いのや楕円形のものもいる。
牛の角は、生まれる時には生えていないが、生まれた時に、角がどこから生えてくるかは、指先で頭部をまさぐるとはっきりと判る。生まれて1ヵ月後には頭部から0.5cm位に伸びてくる。一月に約0.5~0.8cmずつ伸びて、生後10ヵ月目には、5~8cm伸びる。角の伸びる速さは、黒毛和種では全てが同じ速度で伸びるというものではない。遺伝的に差があったり、栄養状態の善し悪しによる差もある。
また、角を外傷や突き合いの結果、損傷し正常に伸びない場合もある。損傷を受けた場合は、左右の角の長さが均等ではなくなる。
角の形の中で、丸いか楕円かと太い細いや長さ、角の色や光沢などは、遺伝的な影響を受ける。この他角の形は、上下・前後左右など伸びる方向が千差万別である。
何故、伸びる方向がそれぞれに異なるかは、牛が飼われている場所の構造が密接に関わっている。それに、牛個々の動きの癖も深く関わっている。
例えば、飼槽、つまり餌場の構造と牛が飼槽にクビを出す上下の横棒の高い低いや、ウォーターカップなど、つまり水飲み場が右にあるか左にあるか、周囲の柵の形や位置などによって、角は微妙に形付けながら伸び、個々の形が形成される。
写真のような形になることもある。餌を食べ、水を飲んで寝ること以外は、暇を持て余している牛たちのこと、日頃の癖が加われば、この様な芸術作品なみの形ができあがることになる。大まかの形は、生後20ヵ月目頃には形取られる。




格好いい牛の角

2008-03-16 11:03:18 | 牛の角
牛には角が似合う。本来無角牛以外、当たり前に角は生えてくる。
飼う人間の都合により、除角する。牛同志喧嘩させない、けがさせない、餌の取り合いをさせない、人に危害をさせないなどのために、生まれて1かヵ月以内の子牛は、角が生えかかった時に伸びないように瞬時に焼く。また子牛市から導入した時には、角を鹿の角キリのように切断する。その結果、本来の牛の品種ではなくなり、実に括弧が今一となる。少しだけ角が残ったり、角の周りに前髪如きの牛毛が伸びて、なんだか不格好な感がする。
それにひきかえ、写真の牛は雄牛を去勢した牛であるが、この角からは勇壮且つ威厳さえみなぎっている。だからといってこの牛が人に危害を与えることなどは、皆無に等しい。実に人なつこく優しい眼差しをしている。これぞ牛特有の勇姿なのである。
このプログでは、様々な角の形をした写真を掲載してコラムを続けようと思う。

牛の角の役割

2008-03-15 23:23:49 | 牛の角
日本で和牛の品種として登録されているのは、黒毛和種・褐毛和種・無角和種・日本短角種の4品種である。このうち無角和種のみが無角で、その他は有角品種である。
牛に何故角があるのだろうか。
①牛は草食動物であり、一般的に草食動物は、肉食獣に比し、どう猛ではなく、どちらかと言えば、気弱な動物である。その性質の故か、草食動物は有角が多い。
害敵からの保身用に角は不可欠なのである。つまり、牛の角は害敵を威嚇する目的がある。
②野生牛や放牧牛は、渇水期の飲水の確保や、ミネラル補給のためなどに地面等を掘り起こして用を足す。それに角や四肢を駆使し、それらを補給する。
③牛はおとなしいとの感覚があるが、牛同志では餌の取り合いは日常茶飯事であり、その取り合いには角の威力が有効なのである。
④06年に鹿児島で起きた集中豪雨で、2,000頭規模の肥育センターが水没し、数十頭の肥育牛が犠牲になった。その時に犠牲になった一因に、無角したことが原因であったとセンター長の体験談を聞いた。猫の口ひげではないが、牛の角も自らの体幅を図る尺度にしているというのである。牛は、前に出ようとする時、後ろすざりして出直そうという知恵がない。無角した牛は頭が出られたなら、躯全体も出れると勘違いして、前に出ることだけの動作を繰り返し、結局水没してしまったというのである。有角牛は、角毎出られれば問題ないが、出られなければ、飛び越すとか増水に添って逃げられたそうである。