肥育中に発症する病気のうち日常的に見られ、抗生剤の投与が必要な病気に風邪や発熱、肺炎、放線菌症、肝膿瘍、外傷による化膿などがある。この他にも同様な疾患は多々ある。
これらは発症すると厄介だという先入観がある。
獣医師の診断が的確であれば、用いる抗生剤の効果も的確に効果がある。
特に最近は、風邪などの解熱用の同剤の効果は抜群である。
慢性的な肺炎や放線菌症などは、簡単には効果が現れない。
最近、導入後や生後20ヵ月令以降の牛に放線菌症が多発している。
同菌は常在菌で、口内に傷が出来たりすると、異常繁殖して顎周囲が化膿し、浮腫する。
顎辺りの浮腫で発見するが、抗生剤を投与するだけでは先ず治らない。
初期に切開して膿を取り出すことにより、偶々治る場合がある。
聞くところによると、放線菌症には治りやすいのとそうでない二種類が存在するそうである。
完治の割合は、10~20%程度である。
何故放線菌症になるのかは、良く理解していないが、粗飼料等の先端部分が鋭利なため、歯ぐきなどを傷つけるのが大方の原因のようである。
大鋸屑を喰うことで傷になる可能性もあるという。
大鋸屑を磁石でかき回してみたら、鋸の目立て時にこぼれる1mm程度の鉄くずが僅かばかり付いていたが、その様なことで、口内に傷が出来るものかと、半信半疑だ。
これぞと言う原因がお判りの御仁には、お教え願いたい。
さて、抗生剤のことである。
10年以前なら、無意識のうちに様々な抗生剤が利用できた。
最近は、素人が抗生剤を家畜に利用することは、ほぼ無理となってきた。
効用もさることながら、抗生剤は、食品衛生法が厳しく絡むようになったからである。
食肉生産用の肥育牛は、時には廃棄処分を念頭に抗生剤と関わらねばならない。
国内に置いて、口蹄疫やBSEの発症以降、食の安全安心という信頼感を消費者に理解して貰うため、体内における同剤の残存期間が厳しく制限されるようになったからである。
以前であれば、風邪ひいた牛に、安価なマイシリンなどを投与していたが、現在はこれを筋注したら、3ヶ月間は食肉用に出荷は出来ないことになっている。
繁殖牛の場合は、この様に長期間残存する抗生剤が利用できるが、肥育牛の場合、特に末期には、1日間とか3日間しか残存しない同剤を意識的に利用することになる。
年々ややこしい制約の中で、牛飼いたちは対応にあたふたしているのが実情である。
ましてや病気のままでの出荷は論外なのに。
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