牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

牛は常に脱柵体制にある

2008-04-28 23:00:07 | 牛の管理
本来、野生を駆け回っていた動物たちが、人に手なずけられ家畜として飼われるようになった経緯がある。
その本来持ち得ているであろう本能は、家畜になっても愛玩動物であっても失われることはないだろうと思う。
その様な本能が、牛たちにもある。牛たちは囲まれた飼育場で飼われているために、機会あらば柵の外に出ようと言う本能がありありである。
だから、牛を世話する人が、ドアのロックを忘れたり、柵が壊れたりすると、待ってましたとばかり、脱柵する。脱柵した牛は、敵の頸をとったが如く後肢を尻バネし小躍りして暴れる。これが集団ならなおのことである。
一方脱柵出来ないで、脱柵組を見送る側の牛たちはと言えば、飛び跳ねながら、じたんだ踏んで悔しがる。
脱柵牛が1~2頭なら、畜舎の辺りをうろうろしながら遠くへは逃げない。
ところが、数頭以上であれば、そうはいかない。群集心理の如く、走り出したら止まらない。みんなで渡れば怖くないのである。逃げ落ちた通りが幾通りかあれば、ただごとではなくなる。
肥育牛の場合は、普段から餌を飽食状態で摂取しているため、盗食と言う行動は執りにくい。それまで、閉じこめられているため、運動量は極端に少ない。その様な牛が、急激な行動を取ることは、四肢や心臓などの動きが耐えられない状態になりかねない。
またこれが、肥育牛でなく、繁殖用雌牛であれば、日頃餌を極端に制限されているため、盗食が起こる。
盗食した牛は、日頃食う餌の種類が異なることと、その量が多量となるため、消化不良から食滞を起こす。
牛の胃内には、草など餌の分解を助ける働きをするバクテリアなどが多量常駐しているが、これらのバクテリアなどは、通常摂取する餌をターゲットとしている。
他所で異なる餌を多量に摂取してしまえば、それらを分解するバクテリアなどがいないため、胃の働きがストップする。つまり食滞となる。死する結果になりかねない。
思いやりのある牛飼いなら、ロックや柵の点検は極当然の作業である。賢い牛はうまく学習して、ロックを外す牛もいるほどである。


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