日本史学習拾遺

日本史よもやま話、授業の補足、学習方法

トヨの墓なのか?―ホケノ山古墳(学外授業から)

2014-11-24 19:02:08 | 弥生時代
夏休みの大学スクーリングの学外授業の続きです。
箸墓古墳の南側を歩き、JR桜井線の線路を越すと、ホケノ山古墳があります。箸墓古墳の東側になります。私はこの古墳にも関心があって、こっちが卑弥呼の墓だったりしないのかなとちょっと思ったりもしていました。今でもその可能性がゼロとは言い切れないのではないかと思っています。

ホケノ山古墳は、箸墓古墳より少し古い3世紀中頃に造られた古墳です。
ご存じかと思いますが、前方後円墳の一番最初のものが箸墓古墳ではありません。最初の頃の前方後円墳として「一番大きいもの」だということです。ですから、箸墓古墳より古い前方後円墳はいくつかあります。そういうものの一つがこのホケノ山古墳です。

この古墳は、宮内庁が管理する陵墓には含まれていないため、内部の調査もされているようですが、誰の墓であるかは不明で、ただ、大神神社では「豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)」としているようです。『日本書紀』での表記は上記のとおりですが、『古事記』では「豊鉏入日売命」「豊鉏比売命」と表記されたりします。崇神天皇の皇女です。
名前に「豊(とよ)」の文字が含まれることから、トヨスキイリヒメ命を邪馬台国の卑弥呼の宗女、台与(トヨ・イヨ)に比定する説もあります。

全長80m、後円部径60m、前方部長20m、前方部幅23m、後円部高7.7m。
棺内外から多数の副葬品があり、画文帯神獣鏡1面、銅鏃38点以上、鉄鏃75点以上、素環頭大刀1口、鉄刀1口、鉄剣6口、その他鉄製品、土師器多数、内行花文鏡と画文帯神獣鏡の破片
(以上学外授業のレジュメより)

これをレジュメから写している間に、この副葬品は、女性ぽくはないなと思いました。
レジュメには、また、
「箸墓古墳の被葬者を支えた有力者の墓」(画文帯神獣鏡の複葬から)
※画文帯神獣鏡は中国製で、製作は2世紀中葉から4世紀の間(樋口隆康氏)

とあります。箸墓古墳より古いのに、箸墓古墳の被葬者を支えた人の墓になるのか?と疑問にも思いますが、先に死んだんでしょうか?
地理的には、箸墓古墳の中心線の延長上にホケノ山古墳の中心があり、何らかの関係があるように見えます。

トヨの墓という説にも興味をひかれます。その場合、卑弥呼の墓として、ホケノ山古墳より古い墓がなければなりません。

いずれにせよ、女性の墓だという言い伝えの墓がこの地域には多いという印象です。



ホケノ山古墳の上に上がると、とても見晴らしがよく、箸墓古墳や三輪山その他が一望できるすばらしいロケーションらしいのですが、その日は雨で足場がよくないからということで上がれませんでした。というか、私は体力がぎりぎりで、上がると言われなくてほっとしたような次第です。涼しい季節に訪れて、ゆっくり見てみたいです。皇族の墓と宮内庁が認定していないおかげで、上にも上がれるのですね。
ホケノ山古墳は、あまり大きくはなく、ぼうぼうの草に覆われていて、木棺の模型でしょうか?それが露出して展示?されていました。



大体、こういったお棺は、北枕になっているとのことです。前方後円墳の向きがあっちこっちばらばらでも、それは結構統一されているらしいです。箸墓古墳もそうなんでしょうか。

中央のヤマト政権が採用したのが前方後円墳で、前方後円墳を作ることを許されなかった地域・勢力があって、そこでは前方後方墳を作るしかなかった、という説明を見ることがあります。その代表例として、出雲=島根県には、初期には前方後円墳がなく、前方後方墳がたくさん作られます。
前方後方墳が多い地域は、いわゆる「負け組」的扱いを受けているように感じられます。
しかし、今回の学外授業のレジュメその他を見ていて、ヤマト政権の中枢部にも前方後方墳があるじゃないか、と気が付きました。

あの纏向遺跡の特殊建物群の隣(南側)に、メクリ1号墳という前方後方墳があります。それも纏向遺跡の一部として去年国指定を受けています。
http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/photodetail.asp
もし纏向遺跡が邪馬台国・ヤマト政権の宮殿跡だったとしたら、その中枢部に前方後方墳があるんですよ。こういう情報は、なかなかマスコミその他には出てきません。

他にも、箸墓古墳を含む「大和古墳群」の分布図を見ると、全部で40の古墳のうち、前方後方墳が6基ほどあります。
その名称は、矢ハギ塚古墳、星塚古墳、フサギ塚古墳、ノムギ古墳、波多子塚古墳、下池山古墳です。
近畿地方だからといって、前方後円墳一色ではない、ということを、確認しておきたいと思います。


箸墓古墳とホケノ山古墳の間を走るJR桜井線。単線ですね。

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