まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

忘れ得ぬ運動会

2016年10月08日 | 日記

運動会シーズンである。
この三連休もどこかで運動会が開かれていることだろう。
数ある学校行事の中でも運動会は特別である。

仕事であまり学校行事には参加できない私ではあるが
運動会だけは皆勤賞かも知れない。
運動会と言えばやはりわが子の応援には力が入るもので
何年前だったか中学最後の運動会で
息子が100メートル走で一等賞を取った時は
まるで競馬のゴール前のように興奮して声を上げたため
カメラを撮るのをすっかり忘れてしまった。
まあ、親バカの典型なのだが
そんな私にとって忘れられない運動会がある。



それは岐阜県飛騨地方にある山深い小学校。
すでに廃校となったその校舎では
全国から集まった20名ほどの「山村留学」の生徒たちが
寝泊まりしながら暮らしていた。
山村留学は子供たちを大自然の中で健康に育てようと
NPO法人が中心になって始めた制度で
主に都会の小学生たちが親元を離れて暮らしていた。
喘息などの病気を抱えた子、自閉症の子、登校拒否の子など
それぞれ事情のある子供もいたように記憶する。

当時、テレビの旅番組を担当していた私は
この山の小学校の運動会を
番組に取り入れて感動的なシーンを演出したいなどと
いかにもテレビ屋らしい安っぽいことを考えていたのであった。
ところがである。

前日からタレントさんも一緒に現地入り
子供たちとの交流もして準備万端だったのであるが
夜中に思いもかけぬ豪雨。
一夜明けるとグランドは一面水浸しで
とても運動会がやれるようなコンディションではなかった。
やれやれと、諦めかけたのであるが・・・



子供たちの父兄から
なんとか運動会が出来ないものかという声が上がり
学校側もその熱意に押されて開催となった。
はるばる遠くから山奥の小学校にやって来た父兄にとって
スケジュール的にも延期はあり得ず
何よりわが子の雄姿を見たいという気持ちだたのだろう。
さあ、それからは父兄や先生はもちろん
子供たちも一緒になって全員でグランドの水かき作業。
たまった水を雑巾で吸い取り、モップでぬぐい
役場から排水ポンプまで借りて来ての大復旧工事となった。



そうした悪条件の中で行われた運動会。
これが実に素晴らしかった。
まだあちこちに水たまりが残るグランドで子供たちが躍動した。
リレーではぬかるみに足を取られて転倒者が続出。
シャツもパンツもすぶ濡れで
最後には顔中、泥だらけで走る子もいて
そんな必死の姿に父兄たちも惜しみない拍手と声援を送った。

私も目頭が熱くなった。
カメラマンも涙で目がかすんで困っていた。
あざとい演出を考えた自分がただただ恥ずかしく
子供たちの懸命な姿に打たれていた。

もう30年以上も前のことである。