雪の下

 定年退職した年寄りが日ごろ感じることや、ドライブ、山歩きなどで撮る風景、草花の写真を記録します。
 気の向くままに。

S駅の桜

2006年04月12日 | Weblog
 S駅のホームには、私が子供のころからの桜が4本あった。
S駅がまだ小さな無人駅であった頃に植えられた桜だが、幹周りの直径が5、60cmもある立派な桜になっていた。
 私はこの桜の木の成長と共にサラリーマン人生を送ってきた。数年前、無事定年を迎えた時、「ありがとう」と、この桜につぶやいたことがある。毎年満開の桜を見て、ああ今年も春が来たと心を新たにしたものだった。
 毎朝この桜に励まされて出勤していたような気がする。つぼみがふくらみ、満開になって散り落ち、青葉になる。毛虫を気味悪く思ったこともあるが、時の流れを感じさせてくれる駅のシンボルとして、心を癒してくれていたのだ。
 昨年、その桜が3本切り倒されてしまった。しばらく切り株が痛々しそうに残っていたが、もう今は影も形もない。
簡単に切られてしまったが、この駅の利用者はもちろん、通過する車窓から見ていた人など、この桜に思いを寄せる人は沢山いただろう。
ホーム改造の邪魔になったのが切られた原因のようだが、古木に対する思いやりは全く感じられないように思った。何とかこの木を残す工夫をしてもらいたかった。桜を残こそうと言い出す人がいなかったのかと、関係者の思いやりのなさをさびしく思う。
 切ってしまったらもう元には戻らないのである。40年も50年もの時間をかけて育ててきた桜と、大勢の人の思い出が一瞬にして消えてしまったのである。
 この春も満開の桜が見られたはずだったのに、立派な無人改札機と風情のまったくないホームがあるだけである。
 利益最優先、邪魔なものは切ったらいいとばかりに、思いやりの感じられない行為は、今時の風潮を見せられたような気がしてさびしい気がする。
コメント (1)
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