蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

『東京暮色』

2018-10-13 | 映画
へぇ〜、小津もこんな映画作ってたんだ。タイトルがタイトルだから、例によってありふれた日常がダラダラ続く映画かと思ったら、違った。波瀾万丈、てワケじゃないが、あんまり日常的ではない設定で全然日常的ではない出来事が続く。

笠智衆演じる父親は、妻に浮気され出奔された過去がある。長女の原節子は夫とうまく行かず、幼い娘を連れて里に帰っている。次女の有馬稲子は男と遊び歩き、妊娠している。

次女は男が責任を取ろうとしないものだから中絶するのだが、そのあとで男をどつき回す。そのときの、怨念のカタマリみたいな有馬の表情がすさまじい。

長女の方は、自分たちを捨てた母親を恨んでいる。その母親が家を訪ねてきたときの、原の表情もまたすさまじい。

あれほど激しい感情表現は、小津のみならず、当時の日本映画で類を見ないのではなかろうか。しかもセリフなし、表情のみだよ。

黒澤映画の登場人物は、のべつ怒鳴り散らすが、気迫の表出ではあっても感情の発露って感じではない。

ただし、小津の映画はやっぱ突っ込みどころが多いね。

事故か自殺か、電車にはねられた次女が運び込まれた病院で、ラーメン屋のオヤジがペラペラ状況を説明するシーンは、黒澤ならぜったい撮らなかっただろな。成瀬でも撮らなかったかも知れない。

大体、瀕死の娘の枕元で父親がうららかな笑顔で、お世話になりまして、なんて言うか? 大した怪我じゃないのかと思ってしまったよ。

ま、ああいう蛇足的シーンの多いのが小津の小津たる所以なんだろうけど。

ところで、オレもいい加減ネトフリとかに入って新しい映画観ないとな。……とか思いはするんだけど、入ったが最後、家から一歩も出なくなるかもなあ。それがコワい。

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