奥山佳恵という女優さんは、写真で見ると円満な笑顔の美しい人である。だが失礼ながら、これまでは取り立ててドラマないし映画での印象はなかった。
それが、朝日のインタビュー記事でダウン症のお子さんの子育てについて語っているのを読んで、彼女の笑顔以上に心を捉えられてしまった。
出生前の胎児検査について彼女はこう語る。
「赤ちゃんの顔まで立体的に映し出す4Dの検査は、4千円かかると言われました。4千円あれば近所のスシローで家族3人でおなかいっぱい食べられます。4Dかスシローか……。家族で悩んだ結果、スシローを選びました」
もちろんこれは、レトリックである。4000円が彼女に負担できないわけがない。だが、出生前の検査という、ある意味、生命の尊厳に触れかねない不遜な振る舞いを彼女は避けた。そのことを大げさに深刻ぶることもなく、回転寿司の話にすり替えて鮮やかに切り抜けた。
この爽やかな語り口、軽妙なセンスにオレはつくづく感じ入ったね。誰でも出来るようでいて、誰にも出来ることじゃない。
彼女は当初、ダウン症の子を持ったことに、当然ながら強い不安を抱いていた。「えたいの知れないモンスターで家がぐちゃぐちゃになるのでは」と怖れた。だが、実際に子育てをして得た結論は、「本当のモンスターは、わからない・知らないことによる不安そのもの」だった。聡明な知性のうかがえる結論だろう。
子育てに限らず、モンスターはいつも心の中にいる。人間同士の敵意、国家間の敵意。その多くは双方の思い込みによるものだ。そういう見えないモンスターを殲滅する武器は唯一、奥山佳恵さんが持っているような知性だけであろう。
それが、朝日のインタビュー記事でダウン症のお子さんの子育てについて語っているのを読んで、彼女の笑顔以上に心を捉えられてしまった。
出生前の胎児検査について彼女はこう語る。
「赤ちゃんの顔まで立体的に映し出す4Dの検査は、4千円かかると言われました。4千円あれば近所のスシローで家族3人でおなかいっぱい食べられます。4Dかスシローか……。家族で悩んだ結果、スシローを選びました」
もちろんこれは、レトリックである。4000円が彼女に負担できないわけがない。だが、出生前の検査という、ある意味、生命の尊厳に触れかねない不遜な振る舞いを彼女は避けた。そのことを大げさに深刻ぶることもなく、回転寿司の話にすり替えて鮮やかに切り抜けた。
この爽やかな語り口、軽妙なセンスにオレはつくづく感じ入ったね。誰でも出来るようでいて、誰にも出来ることじゃない。
彼女は当初、ダウン症の子を持ったことに、当然ながら強い不安を抱いていた。「えたいの知れないモンスターで家がぐちゃぐちゃになるのでは」と怖れた。だが、実際に子育てをして得た結論は、「本当のモンスターは、わからない・知らないことによる不安そのもの」だった。聡明な知性のうかがえる結論だろう。
子育てに限らず、モンスターはいつも心の中にいる。人間同士の敵意、国家間の敵意。その多くは双方の思い込みによるものだ。そういう見えないモンスターを殲滅する武器は唯一、奥山佳恵さんが持っているような知性だけであろう。