蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

安楽死

2013-08-29 | 社会
中国で、遊んでいた6歳の幼児を女が引っさらって眼球をくり抜いたそうだ。角膜を取るためだったとか。

ブラジル映画『セントラル・ステーション』にも、養子斡旋と称して臓器売買のために子供たちを引き取る闇組織が出てきたが、こういう非人道的犯罪が世界中に蔓延してるんだろうね。身の毛がよだつ。

金持ち国の延命治療が、一方で子供たちを傷つけ、命を奪う犯罪を増やしている。ひどい矛盾だ。

オレは自分自身がトシ寄りだから胸を張って言うが、人間の寿命をむやみに引き伸ばしても、いいことは全然ないんじゃないかね。

子供たちの臓器をもらって生き延びてる100歳の金持ち老人が、どれだけ社会に貢献できるのか。老人は、生産性が低い。社会にも家族にも負担を掛ける。老人人口が減れば社会保障財源の難題も緩和される。一挙に、とまでは行かないだろうが。

しかし、このままだと社会保障は確実に行き詰まる。財政赤字、すでに1000兆超えだよ。

そういや、70歳以上の老人が法的義務として殺し合う未来小説を筒井康隆が書いてたね(『銀齢の果て』)。あれ、荒唐無稽な絵空事じゃなくなるかも。

そんな無法状態に陥るよりは、安楽死を法制化した方がいいんじゃないか。高年齢層の支持が大事な自公政権は、絶対に自分からは言い出さないだろうが。

ヨボヨボの肉塊となり果てながらなお生き続けるなんて、オレはまっぴらだね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

復刻音源サイト

2013-08-25 | 音楽
元BBCの音響技師が創設したPristine Classicalという配信サイトの復刻音源を、今月のレコード芸術が紹介している。その音質は「細部すべてが水晶のように透明で、かがやかしい光に包まれていて、かつて聴いたことのないほど雄弁」なんだと。

クラシック評論家のゴマスリはいまに始まったことじゃないが、ここまでホメちぎるのは珍しいよね。もっとも、記事の筆者自身の評言ではなく、イギリスの音楽誌に載ったお世辞の翻訳だけど。

ともあれ、歴史的録音の復刻サイトなら復刻録音で一番人気のマリア・カラスがないわきゃない、とアクセスしてみたら、シメシメ、ありましたよ6点も。で、さっそく1955年の『ノルマ』スカラ座ライヴをダウンロード。

ところが! なんだよこれ。まるっきりアルゼンチンDIVINA盤のパクりやんけ。

いや、“まるっきり”は言い過ぎで、開幕から15分間の欠損部分はDIVINAと違い、ガヴァッツェーニの頼りない演奏じゃなくセラフィンの雄渾きわまりない演奏で補ってある。2幕冒頭のアリアにかぶる酷いノイズも、きれいに消してある――というより、ノイズのない別の音源をはめ込んである。

しかしだね、こんなことはDIVINA盤のほかにイタリアのIDIS盤とパソコンと音楽編集ソフトがあれば、シロウトだってできるんだよ。現にオレ自身がやってら。

何より許せないのは、第1幕フィナーレのトリオと終幕の二重唱でDIVINA盤の欠点をそっくり引き継いでいることだ。このパッセージで、カラスはまるで断末魔の老婆の絶叫のようにギスギス痩せた金切り声を張り上げているが、それはLPバージョン(米Limited Editions盤)の彼女とはまるで別の歌である。LPのカラスの声は温かくまろやかに、余裕でうたってんだよね。

DIVINAやEMIに限らず、復刻CDは大体においてノイズ削りすぎの嫌いがあって、これがカラスといわずあらゆる人間の歌声をダメにする。NoNoiseだのCeDarだのといったノイズ・リダクション・システムに音楽を通すと、決まって音楽の微妙なニュアンスが失われてしまうのだ。

こういうノイズ削減プログラムはノイズの波形を記憶しておいて、音楽信号の中から該当の波形をカットするのだが、人声や弦のように複雑な微細信号を大量に含むデータからノイズ波形だけを正確に識別して打ち消すなんて、土台ムリな話じゃね?

どんなプログラムもコンピューターも、人間の耳ほど敏感じゃない。だから音楽信号をノイズ・リダクションに掛けると、骨粗鬆症で骨からカルシウムが溶け出すみたいに音楽からコクと味わいが抜け落ちていく。

Pristineのサイトは、古い録音に劇的な新生命を吹き込んだだの、カラスの声に前例のない透明感と魅惑が加わっただのと、大層な自画自賛の弁を綴ってあるが、こんな他人のフンドシ商品をアップしといて、よく言うよ。いやしくも音響技師が最高の音質を目指すんなら、できるだけオリジナルに近い音源から音を起こすべきだろが。安直に既存のCDなんか元ネタにすんなよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4000本

2013-08-23 | スポーツ
昨日は、何年に1回もないような一日だったよなあ。イチローの4000本に藤圭子の飛び降り。

五木寛之が言ってるとおり、藤の恨み節はショッキングだった。あんなに荒んだ、出刃を逆手に握って迫ってくるような歌は他にあんまり聴いたことがなかった。アマーリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」を初めて聴いたときも仰天したが、それは暗さに驚くというより、歌のうまさに驚いたのだった。

ンなわけで驚くには驚いたが、藤圭子を聴き続けたいとは思わなかったねえ。取り立てて、うまい歌手じゃなかったし。なんせ当時は、ちあきなおみに青江三奈、超絶うまい歌手の全盛期だ。藤は何度か聴くと、猛々しさがハナについた。なんかワザとらしい。

彼女のプロデューサーだかマネジャーだかが「放っとくと、どんどん明るくなってしまう」とこぼした、とかいう話をどこかで読んで、決定的に冷めてしまった。でもまあ、一世を風靡したことは事実だし、一時代を画した歌手であることは間違いないと思うよ。

彼女が活躍した1970年前後といえば、全共闘へのシンパシーが次第に冷めつつある時代だった。新左翼への幻想は極左だけじゃなく、一般市民も共有していたのだ。それが内ゲバの頻発その他で、次々裏切られていった。

その失望感(五木じゃないから、ルサンチマンなんて実感の湧かない言葉は使いません)を藤圭子が掬い取っていたのもまた、間違いないだろう。だから、あさま山荘事件というトドメ以後、彼女はほとんど聴かれなくなった。

それにしても、なんで飛び降りなんかを。

代わって、こちらは健全そのもの、イチローの4000本。世界で3人しか達成していないってんだから、すごい。元同僚の田口壮が、天文学的数字と言っていたけどね。

悔しいことに報道ステーションのコメンテーターに先に言われてしまったが、イチローの本当のすごさはしかし安打数よりも、石のように硬いボールを打ったり捕ったりするゲームで22年間、大した怪我をしなかったことだろう。きわめて厳格な体調管理を自らに課していることは、あの体脂肪率の低さからも想像できる。

でもイチローがここまで成績を残すことができたのは、意識の上で日の丸を背負ってないからじゃないかな。オリックス時代、彼は日本のスポーツ・ジャーナリズムを毛嫌いしていた。メジャーに移ってからも松井と違って無愛想を貫いた。で散々バッシングされ、スポーツ紙しか読まないアホがいまもケチな嫌味をネットに書き込んでいる。

低俗レポーターの視点は一つだけだ。“日本人”が外国にどれだけアピールしてるか、どれだけ受けてるか。そんなのに一々付き合っていたら、個を潰されてしまう。それをイチローは、はっきり知っている。国民栄誉賞の辞退も、多分それが理由だろう。

イチローといえば、目に焼きついてる光景がある。メジャー初年度のオフ、彼は地元シアトルの小学校を訪問した。歓声を上げる子供たちの中に入っていき、床に腰を下ろした。すると、一人の小学生が座席を跳び出してイチローの首っ玉にかじりついた。イチローは笑ってその子を抱きかかえた。先鞭をつけた勇敢な子はすぐ席に戻ったが、他の子供たちがわれもわれもとイチローにすがりついた。

あの子たちも、いまではいっぱしのビジネスマン、一家の主になっているかも知れない。彼らの胸の中には、いまもイチローに触れた思い出が生きていることだろう。民間外交のお手本。

あれ以上見事に日本のイメージアップをやった外交官て、いるかね。少なくとも、戦後の日本に。

あっ、こういう見方が一番いかんのか。

野球関連でもう一つ、個人的慶事を言わせてもらうと、7月中“逆転のロッテ”から“逆転負けのロッテ”へと化していたチームが、ここんとこ6カード連続勝ち越し。ついには18得点のサンドバグ打撃をやってのけた。今日からの楽天との3連戦で首位奪還も不可能じゃない。

昨日はホント、特別な一日でした。フクシマの汚染水300トン漏れ発覚に比べれば、ものの数にも入らないが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オリバー・ストーン

2013-08-15 | 政治
Gunosyに登録してあるのだが、どういうわけかMSN産経だのZakZakだの、俺の大嫌いな産経系のニュースばかり拾ってくる。だから大半は読まずに削除してしまうんだけど、昨日送ってきた記事はちょっと面白かった。

オリバー・ストーン監督がヒロシマの原水禁大会に出席した。それはどのメディアも伝えたが、彼がどんなスピーチをしたのか、詳しくは朝日を含めてどこも伝えなかった。その全文がここに掲載されている。

当日は周知のとおり、安倍が出席していた。その面前で、この男が平和だの核廃絶だの口にするのは「偽善だ」と言ってのけたんだから、こりゃ痛快だよね。まったく、原発再稼働と原発輸出に精出しといて「核廃絶」もないもんだ。

その三日後、長崎平和宣言で田上市長は、NPTの共同声明に署名拒否した日本政府は「世界の期待を裏切った」と言い切った。あれも安倍の面前でだった。胸のすく思いとは、あのことだ。

ストーンがオバーマのことを「ヘビのような人間だ」と言ってるのにも同感する。核軍縮を訴えるヒューマニストの仮面の下で、TPPを通じて日本を骨の髄までしゃぶり尽くそうとしている。ブッシュほど単細胞じゃないから、より狡猾だ。

オバーマ(の意を受けた官僚、特に財務省)の工作で、鳩山、小沢がダーティ・イメージ(もしくは無能イメージ)を貼りつけられて政治生命を絶たれたことを、ストーンは知っている。

「(日本にも)高邁な道徳や平和のために立ち上がった人が……ひとりいた。それは最近オバマ大統領の沖縄政策に反対してオバマに辞めさせられた人だ」誰のことか、言うまでもないよね。

「どうして……日本は、アメリカの衛星国家としてカモにされているのか……なぜ立ち上がろうとしない」同じことを54年前、来日したゲバラも言っていた。日本は半世紀以上、怠惰に過ごしてきたということだ。

いま振り返ってみるまでもなく、野田や玄葉など民主党政権末期に閣僚を務めた右派政治家は、政権の息の根を止めて自民に権力の座を明け渡すために官僚が送り込んだトロイの木馬だったとしか思えない。

彼らは東アジアに緊張状態を創り出すために尖閣を国有化し、アメリカの傀儡政党、自民にとって絶妙のタイミングで解散した。なんのためにそんなことをしたのか。

もちろん中国包囲網を形成して、ふたたび冷戦状態を創り出すためだ。オバーマを頂点とする米軍産複合体は常に、全盛を謳歌した2超大国時代の夢よもう一度、なのだ。

オリバー・ストーンは、かつてトム・ウルフが軽蔑的に呼んだ“ラディカル・シック”の現代版に過ぎないのかも知れない。スピーチには、能天気丸出しの個所もある。それでもやはり、大半のメディアが反政府的ポーズを取っても核心情報は伏せてしまう日本よりアメリカの方が、言論の自由の伝統が長いことを実感する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ひろしま」

2013-08-07 | 映画
昔の小中校では、課外授業で映画を観に行くことがあった。クラスの全員が先生に引率されて映画館へ出掛けていく。こうして「ひめゆりの塔」とか「ビルマの竪琴」なんかを観た。いまはテレビもDVDもあるから、あんなことやってないだろうけど。

「ひろしま」も課外授業で観た。中1の時だった。日教組の肝煎りで制作された映画だから、まあ当然かもね。甘ったるい恋愛メロドラマにばかり出ていた美人女優の月丘夢路が、初めて自分の意志で出演したことでも話題になった。たしか、ノーギャラだったはず。

あの「ひろしま」が、いま自主上映で再公開されているという。ぜひ観に行かなきゃ……と言いたいが、ちょっと気が重い。およそ映画を観てあんなにシンドい、息苦しい気分に陥ったのは、後にも先にもあのときだけだ。

スタッフはドラマを創り出すなんて意識じゃなく、ヒロシマの地獄絵図を克明に再現する、その1点のみを目標にしゃにむに突き進んだんじゃないかな。プロットが弱かろうと素人エキストラのセリフが硬かろうと、そんなのは二の次だ。原爆投下直後のドキュメンタリーを撮ることが許されなかった恨みを、再現ドラマの制作で晴らしたような映画だった。

こういう作品は、おそらく良し悪しの評価を超えている。観たくなくても観なきゃいけない作品てのがある。これが多分、その1本だ。

ちなみに、初公開の時も「ひろしま」は自主上映だった。反米色が強いとの理由で松竹に配給を断わられたからだ。自主上映になっても、東大は構内での上映を禁止した。このとき日本はすでに主権を回復していたんだけどね。

しかし、第2次大戦当時の米大統領ルーズベルトの未亡人はニューヨークで観て、平和のためになると称賛したそうだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする