アフリカ音楽の泰斗、深沢美樹氏によるパームワイン・ミュージック3部作、完結。第1集の『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ』が出たのが2017年、足掛け8年かかっている。各巻2枚組で、いずれも50曲以上収録。音源を集めるだけでも大変だ。ほかに類を見ない労作である。
押さえておきたいのは、これらが民謡・民族音楽の類ではなく、アフリカのポピュラー音楽であることだ。つまりこれは大昔の文化の遺品・出土品ではなく(第2次大戦前の録音も入ってはいるけど)、我々の時代とも断絶していない生きた音楽なのだ。
そらまあ民謡も、生まれた当時は人々の息吹を載せたポピュラー音楽だったんだろうけどね。
ま、門外漢のオレがあんまり知ったかぶりをやるとボロを出すからこの辺でやめとくが、ともかく世界を見渡してもこんなに突っ込んだ、筋の通ったアフリカ音楽のコンピレーションてないと思う。聴いて楽しむとともに資料として記録として、稀な永久保存盤の一つであろう。
いつもながら森田潤さんのマスタリングが素晴らしく、古い音源が生き生きと精彩に富んだ音でよみがえっている。戦前の録音も、聴く上で何の不都合もない。
去る6月23日、このアルバムの発売記念に渋谷のLi-Poでレコード・コンサートが開かれた。いつものように満席の店内は、なごやかな笑いに満ちて和気あいあいムード。ワールド・ミュージックの集いって、なぜか見知らぬ者同士の垣根が低くなるんだよね。ロックやポップスでは、ギスギスしてるけどね。
しかし残念ながら、Li-Poは今月限りで閉店。ナイジェリアン・ギターが最後のイベントになってしまった。Madam Lipoの伊藤さん、お疲れ様でした。そして我々ワールド・ミュージック・ファンに憩いの場を提供してくださって、本当にありがとうございました。