蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

『明日の記憶』

2013-06-09 | 映画
近ごろの日本映画は拙速が多くてつまらんと以前にボヤいたが、昨夜観た『明日の記憶』には感心したなあ。いまの映画屋さんも、撮ろうと思えばここまでしっかりした作品を撮れるんだ。何より、脚本が細部まで丁寧に書き込まれている。こんなに手間ヒマ掛けた日本映画は、久しぶりに観た。

若年性アルツハイマーを発症したエリート・ビジネスマンの物語。プロデューサーを買って出たという主演・渡辺謙の演技も気合いが入っていたが、それ以上に、妻を演じる樋口可南子の演技が見事だった。

終盤、山奥の窯場へ夫を捜しにやってきた妻が、山道でばったり夫と出会う。夫はいぶかしげに、「どうしましたか」と彼女に訊ねる。夫がとうとう自分の顔さえ認識できなくなったと悟った妻の驚愕と困惑、絶望。

数十秒間の無言の演技で、樋口可南子は妻の深い悲しみを演じ切った。誇張的な表情は一瞬もない、抑えに抑えた心の表現だった。

一縷の望みを託して彼女は昔、夫と出会ったときのセリフを口にする。「枝に実る子と書いて、枝実子」。いい名前ですね、と夫は他人行儀な言葉を返す。

救いのない内容だが、緑濃い山峡で夫婦が渡る吊り橋の遠景のエンディングに深い余韻があった。助け合いの暗喩だろうが、さり気ない表現なので嫌味はない。最近の日本映画ではきわめて珍しいことに、ここには確かに人生が描かれていた。
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本田の眼

2013-06-05 | スポーツ
W杯出場が決まっただけで、なにも優勝したわけじゃないんだから喜ぶのはまだ早い気もするが、何はともあれめでたい。始まる前はブルガリア戦の嫌な余韻が残っていて、先制点をとられた時にはアーやっぱり、とか溜息が出たけどね。

それにしても、日本はなんでこうオーストラリアに勝てないんだろうねえ。いくら大男揃いとはいえ、GKなんか40のジイさんだよ。

しかし本田はやっぱりケタ外れのアスリートだね。前日帰ってきたばかりで、ときおり体が重そうに見える瞬間があったが、試合の勘所は絶対に外さない。

最初のフリーを蹴る前だったか、彼が審判と話をしているときの目の光にはのけぞってしまいましたよ。ケンカしてるのかと思った。ギラギラ光る目玉が飛び出しそうな勢いだったもんね。

過去を振り返ってみても、あんな凄い眼ヂカラはマリア・カラスのそれぐらいしか思い浮かばない。カラスは同世代の歌手に対してライバル意識むき出しだったが、本田も香川がイングランド・プレミアに移籍したときは記者会見で嫉妬とライバル意識をむき出しにしていた。

ケタ外れの人間は、言動もケタ外れだ。
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諸行無常

2013-06-02 | スポーツ
何が気持ちいいって、巨人入りにこだわって我を張ったピッチャーがガンガン打たれるぐらい気持ちのいいことはない。沢村とか菅野とかね。

開幕当初はぶっちぎりで優勝一直線だった巨人が、ここへ来て4連敗。昨日は菅野で負け。しかも相手は、地味で小粒な選手ばかりのロッテだよ。あー痛快。

菅野って、いいピッチャーだとは認めるが、なんでああ見た目に不愉快なのかね。

開幕前の予想じゃ、せいぜい5位がいいとこだったロッテが6連勝。実際、4月は連敗に次ぐ連敗だったが、いまじゃリーグ首位、交流戦首位だもんね。あー痛快。

もっともロッテは去年もオールスターまでは首位、ペナント終えてみれば5位だったけど。

ところで大谷翔平って、誰かに似てる気がしていたが、昨日思い当たりましたよ。ジョニー黒木。ジョニーはいま日ハムのコーチをしているから、彼がマウンドに行くと親父が息子を指導してるみたい。

しかし騒がれる子ってのは、やはり可愛げがあるよな。菅野と対照的。

騒がれたと言や、かつては斎藤佑樹だが、いま何してんだろ。去年の開幕投手だよ。
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