蒲田耕二の発言

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こだわり歴史絵巻

2018-08-27 | 映画
スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』をNHK-BSでやっていたから録画して観る。こんな長い映画、とてもリアルタイムじゃ付き合えない。40年前の古い映画だが、デジタル修復したのか、色彩が素晴らしくキレイだった。

封切り当時に観たときは、雑草の生命力でのし上がった庶民が、結局は卑怯で陰険な貴族にしてやられる物語、て感想だったが、時をおいて見直すと、印象が異なる。貴族のアホ女をたらし込んで財産を横領したペテン師の物語とも取れる。最後に罰を受けるのは当然じゃん……とか思うのは、オレがトシ食って保守化したせいかね。

しかしキューブリックとしちゃ、実は物語などなんでもよかったのかもしれない。どうもこれ、73年の『ルートヴィヒ』への対抗意識から作った気配アリだもん。

察するところ、ヴィスコンティの壮麗なヨーロッパ宮廷文化の再現を観て、そっちが19世紀バイエルンならオレは18世紀イングランドだとハリウッド随一のこだわり監督が奮起した。でなきゃ、カビが生えたサッカレーの小説なんかワザワザ持ち出すワケが分からん。

人々の服装や化粧の時代考証から色彩構成まで、凝りまくりの画面は1カット1カットが古典派絵画なみの緻密さだ。まさしくハリウッド版ヴィスコティ。伯爵家付きの牧師なんて、よくまああれだけイングランドの上流階級特有の細長い顔をした役者がいたもんだね。

という視点から見ると、主演のライアン・オニールがヤンキー臭さを消し切れてないのが少々目障り。頭でっかちで度胸のない少年の描写が軽蔑的なのも、アメリカ人特有の価値観だ。

ともあれ、大ヒットが見込めるアクションやファンタジーは別として、これだけ贅沢の限りを尽くした作品は、ハリウッドでももはや無理かもね。世界が幸せだった70〜80年代よ。

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