Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT139について(2)

2017-10-07 01:45:59 | EMT

 ようやく電源ができたので本体の調整修理にかかります。現在の状態は
 1 左右の音量差がある
 2 左右の音質差(イコライズカーブの不揃いのような)がある。
 3 ハムバランサーが破損している。

 電源をもう少し手を入れる。(備忘録)
 ・ 初段EF804のヒーター回路を変更。12.6Vのセンタータップを利用して両波整流して固定抵抗(0.47Ω)を入れて電圧を合わせる。これでトランスの発熱がなお少なくなった。
 ・ A1(B電源の低い方)が高かったので挿入した抵抗を変更。回路図では5mAでA2に比べて35V低いので両ch共通抵抗で3.4KΩ位を挿入。
 ・ 通電直後のB電圧が400Vをオーバーすることから電解コンデンサーの耐圧をオーバーする。変更すること。
 ・ もう片chの初段のハムバランサーがやはり破損した。0.36Wの負荷が常にかかっている。ここは諦めて両chとも適当なものと交換することにします。

 整備は真空管のチェック、電解コンデンサー、回路図と配置図をプリントして直流、入力を入れて交流の測定値を書き込んでいく。
 



 部品の配置図があると回路図と照らし合わせることによって測定ポイントが見つけやすく点検は容易。今回は外部電源があるので楽だが通電しながらひっくり返さなくてはいけないので電源がない場合にはEMT930(機種は限られるが)やEMT927からの引き出し線が必要になる。(またこれらは当然1台搭載なので2台分の電力は賄えない)
 測定するとDC値についてはほぼ定格であったが入力トランスから1kHz 10mVの信号を入れてミニバルで測定すると、、入口でまずつまづく
 トランスはT94/2 なのだが(webより拝借)
  T94/2 (1 : 20)
  • Ratio of each transformer: 1 : 20
  • Input DC resistance of each transformer: 7,5 ohm
  • Cartridge Z for each transformer: < 40 ohm
  • Output DC resistance of each transformer: 500 ohm
  • Ouput load for each transformer: > 47 kohm
 昇圧比は1:20なので10mV入力すると2次側には200mV出力されるはずで回路図でもそうなっている。ところが実測で50mV。。これはどういうことか??ひょっとして違うのと置き換わっているのかと疑うも両chともT94/2。そこで1次側に20Ω程度の抵抗をパラに入れて10mVを加えるとほぼ200mVが出力された。よくわからないがこの状態でイコライザー部(前段)を測定すると各部定格値となっている。残留ノイズについてはハムバランサーの修復が終わったら測定するがケースを外すと手を近づけただけで針が振れて難儀そう。
 出力ボリューム以降の両chのゲイン差はある様子なのでここから診ていくことにします。


 酷いタコ足コード。前世紀の測定器たち。
 内部を見渡すと後段のトリマーとパラの抵抗2MΩに後付けの抵抗器がある。しかし外して測定すると断線していてとりあえず撤去となった。PP負帰還部。ひょっとしてコンデンサーか??
 
 いややっぱり違う。訳のわからんパーツを調べるには便利なツール。

 各段の電圧、波形を入れてオシロでモニターしながらミニバルで測定する。。

 しかしフォノイコ部でまたつまづく。電圧はDC,ACとも正常値なのだが片chの波形が

 正弦波が早い段でこうなる。。なぜだろう?真空管変えたり色々いじっても変わらず。。分かりません。。
 行き詰まってとりあえず中間の出力調整ボリュームから信号を取り出してレコード再生すると

 何の問題もなく(左右の偏差、イコライザーカーブの切り替え(ただしフィーリングで)ハムなどのノイズ)出力されてしばし聴き入る。よくわからんがとりあえずホッとする。。


  BILLY JOEL THE STRANGER (1977)
 ビリー・ジョエル 4枚目のアルバムで発売は40年前の1977年。全世界で1000万枚売れたらしい。タイトル曲は何かのCMで流れてたと思ったが調べるとHONDA CR-V。
 当時アルバムA面だけ繰り返して聴いていた。インパクトのあるカッコイイ曲は多感で軟弱な自分に大いに影響した。

 この状態でしばらく稼働させても問題は生じない(オシロの波形は気になるが)。やはりラインアンプ部の問題のよう。
 (ここから備忘録)
 何回か測定、試聴を繰り返すも原因がわからず苦労する。イコライザー部は正常動作だったようなので入力から信号を入れてフラットアンプ各部で測定するのだが時々おかしな挙動が現れる。測定値が一致しないなど。発振や真空管の不具合も疑ってかかるがなかなか原因がつかめず。連休初日の丸一日を費やしても改善しない。。3段増幅の2段目(ヘッドホンアンプの片方のECC82)のグリッド入力までは問題ないのだがこの段の増幅が上手くいかない。終段からPP負帰還がかかっていてトリマーコンデンサーが入っている。DC電圧も途中おかしかったが真空管を交換して解決したと思ったがやはりダメ。もっともこの段のカソードには回路図には点線でパスコンが入っていて(実際も入っている。また片chはこのパスコンはパラにコンデンサーが入っていて調整された跡がある)

 イコライザー部の出力は2.05Vになっているが出力ボリューム最大では1/2ECC82のグリッド電圧は記入された42mVにはならない。したがってこの段の電圧にボリュームもしくはオッシレーターの出力を調整する必要がある。
 この段のプレート部は0.68Vで実測(0.56V 0.72V) 次段の1/2ECC82のグリッドは420mV(350mV 450mV) この段のプレート部は260mV(90mV 210mV)で不一致。。

 入力から信号を入れて各部で波形を観察すると終段EF804出力のパラレルフィードの直流カットの1μFコンデンサの出力までは正常に出力されている。ところが出力トランスを介すると波形が乱れる。嫌な予感がするがとりあえず両chともトランスを下ろして各端子間のDCRとLを測定してみる。
 
 インダクタンスの測定は難しく測定器によってかなりの差異がある。

 最悪断線ではなさそうだが2個の2次側の測定値は明らかに異なっており異なるトランスのよう。片方には「BV2169」とあるがもう一方には無印。出力を取り出す端子を左右で違えてまた試聴すると左右差は減っているがまだ感じる。EMT139、EMT139A、EMT139Bの差はわからないが出力トランスの違いがあるのかもしれない。
 また測定してみましょう。

 一つわかったのはオッシレーター出力のアースはアンプに接地が必要だったということ。これで波形が安定してきたのでイコライザーアンプ部(ボリュームよりも前半)の周波数特性を測定してみます。イコライザーカーブはフラット(高域のみ)を入れて4種類になっている。もし銘柄が違っている場合はこのカーブも異なっている恐れがある。

 幸いに左右の差異は少なくイコライザーカーブも回路図通りの4種類だった。また左右の出力差もなくやはりイコライザー部には問題は認められない。
 そこでフラットアンプ部の測定を再度行うと名称シールのある方はフラットな特性で出力されている様子(また検証予定)だがシール無しの方はハイ下がりロー上がりのかなり歪んだ特性になっている。また各段測定してみましょう。。

 シール無しの特に1/2ECC82段で周波数特性が乱れる。終段プレートからのNFが怪しいと睨んで受動素子を測定すると0.5μFのMPコンの容量が激減していてアウト。
 
 喜び勇んで代替えを探すと出てきたのは大きなビタQ(スプラグ製)で0.47μF。何とか納めて測定するとほぼフラットな特性。
 
 早く気付けば良かったのだが(ゲイン差や周波数特性差などから)判明するまで数日(!)かかってしまった。。出力トランスの問題などに気を取られて、、だったがこのトランスも別条件でインダクタンスを測定するとまた異なるデータとなり結局DCRは一致していたという理由で元の結線に戻しています。ただトランス周りの配線の取り回しは左右共通に変更した。
 モノラルアンプ2台のステレオ構成、2台のうちの1台は銘柄が不明、などの条件も今回の混乱につながった。またtelefunken ECC82が1本故障していた。全く出力しない故障であれば判断は早いがゲインが低いなどはますます混乱に拍車をかける。今までメンテナンスの手が入っていなかったのは幸運で故障についても自然劣化に限定して考えられたのは良かった。

 左右chのNF素子の違いはあるが久々にフラットアンプを通して聴いてみると改めて感動してしまう。瑞々しさ、立体感、奥行き、細部の表現など申し分ない。機会があればMarantz 7cと比較試聴したいが各々の良さがあるという当たり前の結論になりそう。業務機は特徴的な冷徹さを持っているがアナログ再生という曖昧さが上手くカバーして趣味の領域にしっかりと食い込んでくれる。これだからアナログ再生はやめられない。 ここ数日の苦労が実って思わず興奮してしまった。

 破損したハムバランサー(直流、初段用)を交換します。入手したのは1個300円の激安品を4個購入(4個セットで売ってた)。届いたのをみると

 なんとも安っぽいのは価格を考えたら仕方ないしむしろよくこの価格でできるものだ。。でもこれは使いたくないなぁ。。分解すると

 パーツの数は多いが金属板などが薄いしプラスチックパーツも使われている。また固定する軸、ナットが大きいのでそのまま取り付けるには固定金具の穴を大きくしなくてはならない。
 再び本体から取り外したハムバランサー
 
 抵抗体を加工して移植することにします。

 そのままでは大きくて入らないので少し解いて切り詰めて金具の位置をずらして再固定して、、。おかげで100Ωが93Ωになった。外筒を小加工して取り付ける。
 

 向かって右側を交換しています。本体や取り付け金具を加工せずに済みました。もう片chも交換しました。

 プレーヤー内蔵の電源についてwebで偶然見つけた配線図ではやはり初段だけもう一段フィルター回路を通している。読み取りにくいが電圧が低いように見えるのが気になる。。

 注文してたコンデンサーが届いて左右ch共交換した。スプラグ製。

 これでようやくまともに音が出るようになった。残っているのは終段のプレートから一つ前段のプレートへの帰還のバリコントリーマの調整(「1978」と書いてある取り替えたコンデンサーの下にある)。これはどうやったらいいのだろうか?Marantzの後期のアンプにもNF調整用のトリーマーがあったがこのあたりは素人には敷居が高い。
 やっぱり歪率計の出番か?

 久しぶりの歪率計はNational VP-7702C  1970年代の測定器だが真空管機器の測定にはとても使いやすくベストセラーだった。シリーズ化されてこのVP-7702Cは最終型(だと思いますが)。低歪オッシレーターはmeguro製でこちらも使いやすい。
 入手した当時は喜んで一生懸命測定してたように思うがすっかり熱も冷めて使い方も忘れてしまった。マニュアルは幸いにもwebで入手できたのでお勉強し直してみる。

 向かって左部分の入力信号のレンジ切り替えと表示部分でメーターのフルスケールが300mVから100Vまでの6レンジ。針が緑の目盛り部分に来るように調節します。また1Vより少ない場合は測れる歪率に制約が出ます。出力側にミニバルがあるわけで私のように1台しかもってないヒトには助かる?


 向かって右側で適当にレンジ切り替えをして針を振らせて歪率が表示されます。右上下のダイヤルは基本波を取り除くフィルターで、例えば1kHzの歪率を測定するときは上下ダイヤルで1kHzに合わせればOK(写真の状態)。上ダイヤルはシールドケース内にバリコンが入っているらしい。

 早速「meouro LOW DISTORTION OSCILLATOR MCR-4021」を測ってみましょう。

 この発振器は1Hz〜110KHz 0〜+10dB だが0dB出力にして測定すると5Hz〜50kHzくらいまで安定して出力されます。100KHzでは0.3dB程度落ちるがオシロの波形は問題ない。
 歪率は0dB 1kHz で1.0V (0dBm) 0,001% 表示になっています。管球アンプには十分なスペックだが良い値を出すには測定する人の腕にかかっているらしい。。

 音出ししているうちに時々「ボッ、ボソッ」みたいな音が出だした。また左右の音量差も相変わらずある。はぐってみると
 
 イコライザー2段目のデカップリングコンデンサーの4μF 350Vがオモラシしている。結構漏れていて滴り落ちる電解液。これは要交換。やっぱり稼働させると色々と問題が発生する。
 部品が来るまで電源の修正

 安定するまでの間に400V近くまで電圧が上昇します。ようやく高耐圧のコンデンサーと交換した。