Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

ALTEC A-333A について

2017-10-09 12:20:52 | ALTEC

 有名なALTEC回路の原典と言われるALTEC A-333Aは1951年頃に発表されたホームオーディオ機器で組み合わせるプリアンプはALTEC A-433A。




 裏蓋の裏に貼ってある回路図

 プリアンプのALTEC A-433Aは実物は見たことはないがアクリル板を用いた当時としては超スタイリッシュな造形。電源はALTEC A-333Aから供給され電源スイッチはプリアンプにあってもちろんモノラル構成。ALTEC A-333Aはとてもコンパクトにまとまった意匠で操作系、入出力はすべて前面で賄う。丈夫な構造のメッシュカバーで放熱対策も万全でとても使いやすそう。コンパクトな割に内部構成はわかりやすくアンプをひっくり返してもカバーのおかげで安定していてメンテナンスもとてもし易い。
 アルテック回路とは初段の5極管と直結の3極管を用いたPK分割の位相反転回路のことでとてもシンプルで故障が少ないと言われ高感度の近代管に多用された回路。位相反転回路はさまざまあるが比較した経験はなくここで優劣はエラソーに論ずることはできません。

 オークションで最近入手したアンプです。説明では不動とのことだったが電源、入出力を接続すると動作するようです。
 



 webに掲載されているオリジナルらしい画像と比較しても改造したと思われるところがかなり目につきます。
・カップリングコンデンサーがwestern electric製になっている。
・入力コンデンサーが取り払われている。
・外部出力電源コネクター2ヶ所がアルミ板で塞がれて各々入力端子と電源スイッチが新設されている。
・外部ACコンセントが未配線
・コードは各所でハンダこてによる焼け、トランス引き出し線の劣化(粉ふき)が認められる。
・ネジ類、ACコードの処理で品格を損ねて(?)いる。


 など

 修復のメニューを考えると
・電源スイッチ、入力端子は変更せずに手直しして使用する。
・カップリングコンデンサーは基板に収まるものを入手、交換する。
・スイッチと入力プラグのアルミ板は少し手を入れて見た目を良くする。。
・こなを吹いているトランスのコードは養生してみる。被覆の荒れているのも同様に。
・ネジは適当なものを探して交換する。ネジ穴が広がってしまっているところはバランスが崩れないようにネジを切ったり削ったりして改造する。

 一番難しいのは適当なネジが揃うか、、です。またトランスからの引き出し線の劣化があり被覆が傷んでいるところは養生しないとシャーシに短絡してしまう恐れがあります。すでに養生が難しくなっている場合はトランスを分解してカバー内部で新たな線材と交換する場合もあります。今回は部分的な養生だけでことが足りそうです。

 外観と内部の修復、養生ができました。カップリングコンデンサーは諸事情で未だ発注できていません。
 
 将来ALTEC A-433Aが入手できた場合は何とかしてコネクターを探しましょう。単独使用ではこの方が(電源スイッチと入力ジャック付いてるので)使い勝手が良い。

 注文していたハーメチックコンデンサーが到着したので早速配線して音出ししてみます。入力から信号入れたのは初めてでアウトプットトランスがホントに生きてるか自信がなかったのでちょっとドキドキした。。
 
 コンデンサーは昨日の昼過ぎにスマホで注文して夕方に送金したのが翌日の午前の早い時間には到着したので(!)作業は昼過ぎには終わりました。全く日本の流通には感心するがそこまで速くなくってもいいですよ。迅速に発送してくれたバンテックさんにも感謝です。

 第一印象は「おとなしく優しい音」。コンデンサーが新品なのでこれから変化があるかと思うが家庭での再生を考慮した音とも言える。
 各部の電圧は正常範囲で交換したカップリングコンデンサーも漏れはありません。適当なプリアンプがなかったのでMacの出力を直接入力しての試聴。S/Nは良好でノーハムはやっぱりありがたいが入力感度は思ったより低い。定格では出力20W 周波数特性は20Hz〜20KHzが±1dBとなっている。測定はまた今度にしてしばらく聴いてみる。。
 
 そのうち家族から「雑音が聞こえる!」とクレームが出た。確かに何か異音が聞こえるので高域で発振してるのかと思ったらアンプ本体から発せられてる「ぴー」。慌てて蓋開けたら発信源は整流管5U4G。。ソケットと足を磨いても完全には治らない。仕方ないので手持ちの5U4GBに交換したら「ぴー」は消えてくれた。酷使された整流管の断末魔の悲鳴だったのかもしれない。
 そのほかは目立ったトラブルもなく聴いていると次第に音に勢いが乗ってくる。ちょっとぼやけていた輪郭がはっきりしてきて聴きやすくなってきた。相変わらず上品で優しい音だが情報量も不足はなく上質の音味だと思う。また安定動作が音にも現れていて業務機とはまた違った安心を感じる。これは回路だけでなくアンプの機械的な構造の堅牢さも関係あると思う。発熱もさほど多くないので2階建に積み重ねても特に問題なさそうでこれはスペースを取らなくてありがたい。

 ALTEC A-333Aの回路上の特徴は前述のようにALTEC回路の原典という他にもチョーク入力の平滑回路、終段のスクリーングリッドの安定化に定電圧放電管という豪華さでコンパクトではあるがが安易でない造りには好感が持てる。特にこの形状は魅力的でシャーシ構造、部品配置(ブロックケミコンは発熱体から一番離れていること、カソード抵抗はシャーシ上にスマートに配置しているなど)、内部配線(基板に部品配置しソケットにはごく短い裸線で繋ぐ)、入出力の処理(全て前面で行う)、などはアマチュアにも参考になりました。1951年という年代を考えてもとても完成度が高かったアンプだと思います。


 お読みいただきありがとうございました。