【奈良・生駒市】近世の初期、織田信長により寺領が没収されるなど、幾多の荒波に遭遇した。 明治初期の神仏分離令による廃仏稀釈の嵐で衰退したが、昭和十年(1935)、本堂の解体修理を経て現在の姿に至っている。
長弓寺はかつては10を超す塔頭があったが、今は法華院・円生院・薬師院・宝光院の4ヵ寺が残るのみ。 宝光院は以前、長弓寺本堂の近くにあったが、近年、宝光院地蔵堂を大門近くに移築された(「長弓寺-(1)」に記載)。 本寺の長弓寺には住持がおらず、現在は法華院・円生院・薬師院の3塔頭が輪番制で本堂を護持している。
■法華院■
本尊・愛染明王坐像を祀る。 植栽を配した趣のある石段の参道の先に、大棟に鯱そして鬼瓦、留蓋瓦を乗せた重厚な山門があり、両側に築地塀が延びる。 山門をくぐり、本堂前庭の入り口に立つ案内板「←愛染明王」に従い、前庭内を進んで本堂へ....開いた扉の奥にライトアップされた愛染明王像が鎮座....拝礼してからカメラに収めた。
愛染明王像は3面6臂で、紅焔に燃える赤い日輪を背負い、獅子冠をいただき、全身が真紅に彩られている。 迫力のある憤怒の形相で愛欲を表現した真紅の愛染明王像が、ライトアップで浮かび上がっている光景は幻想的だ。
切妻造本瓦葺の山門(薬医門)....大棟両端に鬼瓦と鯱が乗り、平降棟下端にヘラのような鳥衾を乗せた鬼瓦、軒先に花の留蓋瓦(牡丹と菊か?)
入母屋造桟瓦葺の本堂....身舎に桟瓦葺の裳腰を設けている
本堂前庭に佇む十三重石塔と火焔光背不動明王立像....石塔の初層軸部に四方仏が浮き彫り/本堂内陣に鎮座する愛染明王坐像....獅子冠をいただき、3面6臂で、持物は不明、全身が真紅に彩られている
前庭に鎮座する守護社越しに眺めた本堂
流造銅板葺の稲荷社....大棟に外削ぎの千木と2本の堅魚木を乗せている/前庭に佇む石燈籠
■円生院■
本尊・不動明王像を祀る。 蓮池の脇の参道を進むと鯱、鬼瓦、留蓋瓦を乗せた重厚な山門があり、前垂れをした地蔵石仏が門前の雛壇に整然と並んでいる。 山門をくぐると、正面に、庫裡と客殿を兼ねた(と思う)横長の建物が建つ。 屋根の左側に煙出しがあり、正面に客殿の玄関そして小さな通用門を設けた仕切り塀の奥に庭園と妻入の本堂がある。
「不動堂」と呼ばれる本堂の屋根に珍しいものを見つけた。 大棟端に鬼瓦や獅子口ではなく、法輪のある台座上に立つ五鈷杵で、初めて見る。 また、向拝に弘法大師空海が持つ大きな「なで五鈷杵」が置かれ、「お大師さまの身体と見て、手で五鈷杵をなでて、その手をご自身の身体の祈願のところにあててください」…とあるのでそうさせていただいた。 されど、ご利益はいまだ…。
切妻造本瓦葺の山門....大棟両端に鬼瓦と鯱が乗り、平降棟下端に異形の鳥衾が付いた鬼瓦、軒先に留蓋瓦(菊か?)
入母屋造桟瓦葺の建物は、左端に煙出しがあるので左側は庫裏と納経所で、右側は客殿で正面は客殿の玄関(と思う)
羽目板壁で瓦葺屋根の煙出し/煙出しと母屋の大棟に鳥衾付き鬼瓦....母屋の鬼瓦はユニークな顔の鬼
小さな棟門を設けた築地塀で仕切られた庭園
庭園側からみた棟門
庭園内に佇む風化破損が激しい三重の塔燈籠(とみられる)/袋部が壊れかけている古そうな石燈籠
庭園が眺められる客殿の縁
妻造桟瓦葺で妻入の不動堂(ここが本堂か?)....千鳥破風を乗せた簡素な向拝
大棟端に設けられた五鈷杵/向拝脇にある手水鉢....注がれる金剛水は長弓寺本尊の十一面観音像の足下に湧く自然水とか/向拝に置かれた「五鈷杵」
■薬師院■
本尊・阿弥陀如来像を祀る。 6段ほどの石造りの階を上り、山門をくぐると、参道に背を向けた東面の本堂が建つ。 簡素な造りの向拝に「桐紋」と「下り藤紋」が入った幕が下がっている。 本堂前庭はかなり狭いが、十三重石塔や石燈籠がひっそりと佇んでいる。
切妻造本瓦葺の山門....大棟両端と平降棟下端に鳥衾付鬼瓦、軒先に変わった姿の留蓋瓦
山門傍に建つ入母屋造本瓦葺の本堂
簡素な向拝に「桐紋」と「下り藤紋」が入った幕が下がる....正面に切目縁、扉は腰高格子戸、小壁と小脇羽目は白壁
本堂直ぐ右手の庫裏と狭い前庭
前庭に佇む初層軸部の月輪に種子が刻まれた十三重石塔/3基の石燈籠....雪見燈籠と笠の形に特徴がある石燈籠
薬師院本堂の屋根....大棟端に鳥衾付鬼瓦、拝に蕪懸魚、妻飾は狐格子
薬師院の近くに建つ薬師院会館
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