【大分・臼杵市】日本で唯一国宝に指定されている磨崖仏。
伝説では1400年前の飛鳥時代から奈良時代にかけての造営とされるが、仏像の様式などから平安時代後期から鎌倉時代にかけての作とも推定されている。
深田の里の丘陵地帯の切立った岩壁に彫像された磨崖仏で、平成七年(1995)に石仏(磨崖仏)として唯一国宝に指定され、「臼杵石仏」の名で知られている。
臼杵の磨崖仏については、2015年2月に「国宝臼杵石仏-(1)、(2)」として投稿したが、カテゴリーに「最古・唯一などの遺構」を設けたので、唯一国宝の石仏ということであらためて投稿する。
磨崖仏は4カ所に所在し、鎮座する場所の地名からそれぞれ「古園石仏」、「山王山石仏」、「ホキ石仏第一群」、「ホキ石仏第二群」(「ホキ」とは「岸險(がけ)」という意味の地名)と称され、60躯以上を数える石仏の内、59躯が国宝に指定された。 石仏はいずれも火砕流が溶結した凝灰岩に丸彫りに近い姿に厚肉彫りされたもので、1400年余の風雨に耐え、仏師の思いを今に伝える穏やかな表情には癒される。 また、造立時に施された彩色が僅かだが残っているのは驚きで、鮮やかに彩色された1400年前の磨崖仏の姿に思いを馳せた。
■古園石仏■
古園石仏は「臼杵石仏」の中心的存在で、中尊の大日如来坐像を中心に、左右に如来像2躯、菩薩像2躯、明王像1躯、天部像1躯の計13躯の石仏が鎮座。 智拳印を結ぶ一際大きな中尊の大日如来坐像は、日本の石仏の中でも最高傑作の一つとされる。 気品に溢れるお顔が幽玄の美を感じさせ、僅かに残っている宝冠の彩色が印象的だ。
石仏は劣悪な環境の中に露座していたため、仏頭の多くが剥落....中尊の大日如来の仏頭も落ちて長い間台座上に安置されていたが、平成五年(1993)に行われた一連の保存修復時に復位され、現在のお姿に。
臼杵石仏」の中心的存在で、中尊大日如来坐像を中心に左右に如来像2躯、菩薩像2躯、明王像1躯、天部像1躯の13躯の石仏が鎮座
智拳印を結ぶ中尊の大日如来坐像....日本の石仏の中でも最高傑作の一つとされる
■山王山石仏■
山王山石仏は、中尊に丈六の如来坐像をすえ、脇尊として小さめの阿弥陀如来坐像を左に、薬師如来坐像を右に3躯の石仏で構成されている。 いずれもお顔の輪郭が丸く、目鼻はこじんまりとしていて無垢な童子の顔そのものだ。
拝観時、薬師如来坐像の前に架台が組まれ紫外線照射器が取付られていたので一部のお姿しか見えなかったが、摩崖仏表面のコケ類等を除去するため紫外線が照射されている光景を見るのは初めてで、非常に興味深かった。
中尊に丈六の如来坐像、左に阿弥陀如来坐像、右に薬師如来坐像の3躯の石仏が鎮座
中尊の丈六の(伝)釈迦如来坐像...優しい顔の輪郭が丸く、無垢な童子の顔のようだ/紫外線照射されている(伝)薬師如来坐像
■ホキ石仏第一群■
覆屋は平成六年(1994)に落成。 ホキ石仏第一群は四つの石窟の龕からなり、20余躯の石仏が並ぶ。 第一龕には薬師如来坐像、裳懸座が残る釈迦如来像、阿弥陀如来像の3躯と脇侍の菩薩立像2躯が鎮座。 第二龕には阿弥陀如来坐像、薬師如来坐像、(伝)釈迦如来坐像の3躯が鎮座するが、中尊の薬師如来坐像は半眼だが黒い瞳がくっきり描かれている。 第三龕には彩色が施された宝冠を被る大日如来坐像と他に4躯が鎮座。第四龕には地蔵菩薩半跏像と十王像の11躯が鎮座するが、地蔵菩薩半跏像の船形光背と衲衣、そして十王像の冠と道服の鮮やかな彩色には目を奪われる。
連なる四つの龕に、如来像・菩薩像及び十王像の20余躯の石仏が整然と鎮座している光景は壮観だ。
ホキ石仏第一群の磨崖石仏....四つの龕からなり20余躯の石仏が鎮座
第一龕に鎮座する磨崖仏....如来坐像3躯と脇侍の菩薩立像2躯
第一龕....左から薬師如来坐像、釈迦如来像、阿弥陀如来像の3躯....中尊の裳懸座の半分が残っている
第二龕に鎮座する磨崖仏....阿弥陀如来坐像、薬師如来坐像、(伝)釈迦如来坐像の3躯
第二龕....中尊の薬師如来坐像は半眼だが黒い瞳がくっきり描かれている
第三龕に鎮座する磨崖仏....大日如来坐像、如来坐像2躯、菩薩立像2躯
第三龕....中央は彩色が残る宝冠をいただき智拳印を結ぶ大日如来坐像、左は阿弥陀如来坐像、右は(伝)釈迦如来坐像
第四龕に鎮座する磨崖仏....地蔵菩薩半跏像と十王像の11躯
第四龕....中尊の地蔵菩薩半跏像の船形光背と衲衣、そして十王像の冠と道服に鮮やかな彩色が残る
■ホキ石仏第二群■
覆屋は平成六年(1994)に落成。 ホキ石仏第二群は二つの石窟の龕からなり、14躯の石仏が並ぶ。 第一龕は中尊に阿弥陀如来坐像で、脇侍に観音菩薩像と勢至菩薩像を配した三尊像が鎮座するが、特に大きな阿弥陀如来坐像は丸彫りに近い精巧に彫像された石仏といえる。 第二龕には「九品の阿弥陀」と呼ばれる9躯の阿弥陀如来立像が鎮座するが、肘から先が欠落していて九品の印相が分からずで残念。 また、左右に1躯ずつの菩薩立像を配しているが、左の菩薩立像は原形をとどめていない。
ホキ石仏第二群の磨崖仏....二つの龕からなり、14躯の石仏が鎮座
第一龕に鎮座する磨崖仏....阿弥陀三尊、脇侍は右に観音菩薩像と左に勢至菩薩像
第一龕....中尊の大きな阿弥陀如来坐像は丸彫りに近い精巧な石仏
第二龕に鎮座する磨崖仏....「九品の阿弥陀」と呼ばれる9躯の阿弥陀如来立像、他に2躯の菩薩立像
第二龕....右側の3躯の阿弥陀如来立像と右端は観音菩薩立像